広島東洋カープ/ 福地 寿樹 一軍打撃チーフコーチ

インタビューを終えて 中小企業診断士の分析
伊藤 監督と選手の架け橋となるコーチの役割は、企業組織に置き換えるといわば中間管理職に該当する。特に企業経営の参考となると感じた印象的な点は次の2点である。
1点目は選手のミスに対する考え方である。野球と同様に企業活動においてもミスはつきものである。経営者は社員に「失敗を恐れずに挑戦せよ」というメッセージを発信するが、その実は失敗を恐れている一面もある。また社員は、失敗による叱責や批判を恐れ、尻込みをするケースもある。チャレンジはしたいがミスはしたくない。この折り合いの付け方として、レベルの高いミスと低いミスとを区別したアプローチは有効だと感じた。上司はどんなミスなら背中を押し、どんなミスなら厳しく接するか、スタンスを部下と認識しておけば円滑なコミュニケーションが図られ、組織全体が積極性を保ち続けられるのではないだろうか。
2点目はコーチ間の情報連携を密にしているということである。福地さんは打撃チーフという役割であるが、走塁面に対しても非常に高い技術をお持ちであり、選手から助言を求められることも少なくないはずである。こうした場面は企業においてもよくあるケースといえる。福地さんは細やかな心配りを行っており、自分のアドバイス内容を本来業務のコーチへ情報提供している。対応が中途半端だと、社員間や管理者間のコミュニケーションがギクシャクするが、福地さんのアプローチからは、風通しの良い組織づくりに努めておられる姿勢を感じた。
塩田 驚いたのは、若手プロ野球選手の特徴が一般の若者とあまり変わらないことである。思い当たる節がある方も多いのではないだろうか。成長途上の若手選手に対し福地さんは、考える力を付けるには経験を積むことが重要であると考え、選手のやりたいことを頭ごなしに否定はせず、まずはやらせてみて、見守り、そして選手自らに気付かせ、対話を重ねて成長を促している。簡単に真似できるものではないが、中小企業の人材育成においても参考となろう。
一番印象的だったのは、野球も「最後は頭」という発言である。AIが進化する中、自分自身で「気付く力」、「考える力」、「理解する力」を養うことは大変重要であることを再認識させられた。また福地さんの指導法は、中小企業診断士のコンサル技法においても参考になる普遍的なアプローチであった。
PROFILE
福地 寿樹
1975年12月17日生まれ、佐賀県出身。93年ドラフト4位でカープ入団。3球団目となったスワローズで2回の盗塁王に輝いた後、指導者の道へ。2023年にファームの打撃兼走塁コーチとしてカープ復帰し、今年から1軍打撃部門を統括する現職に就いた。