巻頭特集 2026.03.24

高い壁が変革のチャンス 試行錯誤させ、理解促す

広島東洋カープ/ 福地 寿樹 一軍打撃チーフコーチ

まずはやってみなさい

伊藤 最近の選手とのコミュニケーションで感じることはありますか。

福地 全員ではないですが、何となく言葉から〝逃げ道〟を感じる選手はいます。不得意なこと、やりたくないことに対して、できない理由をつくってしまっている。指導者からすれば、そこが一番やってほしいポイントなのに、です。

 一流選手は、まず自分の穴を徹底的に埋めて隙をなくそうとします。そして長所をさらに伸ばすのです。若い選手はなかなか、その過程の重要性に気付けないので、時にはコーチが無理やり引っ張り込むこともあります。田村俊介が一例ですね。

塩田 一時は日本代表にも選ばれましたが、伸び悩んでいる印象です。

福地 彼はいろいろな情報を取り入れてしまうタイプで、芯が定まっていないように感じました。なので昨秋のキャンプで一つの課題を与え、それに専念しなさいと伝えました。

伊藤 若い世代は情報過多になってしまいがちですよね。

福地 どんな選手になりたい、という理想がはっきりしていれば、ユーチューブを参考にしてもいいと思うんです。ただ、実際はそうではないことも多い。いつ考えのズレに気付くのかなと思いながら、何日、何週間と過ごすことはあります。

塩田 すぐ修正しないのですか。

福地 選手の意思でもあるので、頭ごなしに否定はしません。うまくいかなかったとしても、それが引き出しの一つになる場合もありますから。そして何よりも、自分で試行錯誤し、理解する経験をさせることが大切だと思っています。

 例えば、まだ基礎ができていない段階の打者が、一流選手の話に感化されることがあります。話を聞くのは大いに結構ですが、トップ選手の思考はシンプル化されているケースが多いです。なので当然、同じようには打てず、悩みます。それでも「まずはやってみなさい」というのが私のスタンスですね。

塩田 私たちも福地さんと同世代ですが、昔とは全く違う手法ですね。

福地 私の現役時代は、選択肢がなかったですからね(笑)。何も分からず言われた練習をこなすだけでした。今の選手には、この練習の狙いはこうだよ、と事前に説明して腹落ちさせます。加えて、取り組む中での対話を通じて選手の気付きや感覚の変化を取り込むようにしています。

監督の理想を伝える

伊藤 監督と選手の間に入る立場として、気をつけていることは。

福地 監督のやりたい野球を選手に周知するのがコーチの仕事の一つです。それを徹底するためには、守らなければいけないルールのようなものがあります。一人でもルールを破る選手がいると組織は崩壊してしまうので、どこまで許容するかという線引きをきちんとするよう意識しています。逆に選手から提案が上がる場合もあり、納得できる内容であれば、監督に伝えています。

 コーチは打撃、守備など役割が明確なので、基本は自分の分野に特化しています。ただ、時には領域外のアドバイスを選手に求められることがあります。もちろん自分なりに答えますが、その内容は必ず担当コーチに共有します。でないと「人によって言うことが全然違う、一貫性がない」という事態になりかねません。企業でも起こりうることなのではないでしょうか。

伊藤 「許容」という言葉が出ました。実際のプレーの面で、ある程度の失敗は許容する方針ですか。

福地 野球はミスがつきものなので、一定の許容範囲は必要です。ただし広すぎてはいけません。どうせするのであれば、レベルの高いミスをしてほしい。それがチーム全体の士気を高めたり、意識を変えたりすることがありますから。思い切って挑戦できるよう、背中を押してあげる存在でありたいですね。

塩田 月並みではありますが、最後に今季の意気込みをお願いします。

福地 正直、きれいに勝てるほどの戦力があると自信を持って言うことはできません。泥臭く、しぶとい打線をつくり上げ、優勝に向かっていきたいと思います。

この記事はいかがでしたか?
県内約2,500社の企業・決算・役員情報などを検索!
PROFILE
福地 寿樹

福地 寿樹 1975年12月17日生まれ、佐賀県出身。93年ドラフト4位でカープ入団。3球団目となったスワローズで2回の盗塁王に輝いた後、指導者の道へ。2023年にファームの打撃兼走塁コーチとしてカープ復帰し、今年から1軍打撃部門を統括する現職に就いた。

関連記事

おすすめ記事

最新ランキング(2026.5.8更新)

企業データベース