
水産業のfish works connect(フィッシュワークスコネクト、江田島市大柿町深江、小林章人代表)は高品質かつ、へい死率が低い手法で養殖したカキの本格出荷を今秋に始める。県西部海域で初めて、海中のかごで育てる「延縄式シングルシードバスケット方式」の許可を県から取得。まずは年内に10万個の出荷を目指す。販売面では広島魚市場(西区)などと協力し、需要に応じた無駄のない生産を図る。
カキ養殖は通常、いかだにホタテ貝をつり下げ、そこに稚貝を付けて育てる。今回の新手法は容量15㍑のバスケットに最大150個程度の稚貝を入れ、波の力を使って揺らす。カキがぶつかり合って殻が削れると栄養が身に集中して品質と成長速度が高まることに加え、付着物が減り、出荷時の洗浄作業や臭いの軽減にもつながる。小林代表は管理アプリを自作し、カキの数量や水温、生育履歴を基に状況を分析。温度変化などに合わせて水深を変えるなどの工夫を凝らす。
食害リスクの少なさも含め、へい死率は低くなりやすい。広島湾南部などで6~9割のカキが死んだ昨年も、小林代表が行った試験養殖では35%程度にとどまったという。今年はカキの大きさなどに合わせた選別のほか、バスケットを定期的に反転させるドライアウト(干出)作業を強化。カキに適度なストレスを与えて捕食スイッチを入れ、より成長を促す。こうした取り組みにより、へい死率は一層下がる可能性がある。
出荷は、うまみや風味が残りやすい殻付きの状態で行う。広島魚市場との連携で市場の詳しいニーズを予測して集荷・仲買など中間業者を介さない形の流通を計画。さらに海外向けにも、同社やファームスズキ(大崎上島町)などでつくる(株)ヒロシマオイスターズ(西区)とタッグを組む。バスケット養殖で鍛えた強固な殻をPRし長距離輸送にも耐えうる点を訴求する。その他、表記所在地に設ける拠点での直売や、SNSを活用した通販も手掛ける。これらの生産~販売プロセスで、今年3月に県から経営革新計画の承認を受けている。小林代表は「いかだ式はクレーンや大型船といった投資が必要になるが、バスケット式であれば漁師などから業態転換しやすい。力仕事も少なく、女性1人が私の弟子として学んでいる。担い手不足という課題に対しても有益な手法として、認知を広げていきたい」と話す。