マサーント / 丹下 工 共同代表

出身地の神石高原町で「補助金に頼らない自立した町づくり」を掲げ、飲食、医療、観光などさまざまな分野のビジネス創出に取り組んでいる。東証プライム上場でソフトウエア品質保証のシフト(東京)代表の弟と共に創業し、今年で4年目になる。
町の人口は2日に1人ペースで減り、このまま何もしなければ40年後にはなくなると言われる「消滅可能性都市」だ。税収10億円に対して歳出は110億円で、大半を地方交付税や国庫支出金に頼っている。自立した町づくりには、人口を増やして税収を増やすしかない。そこで「知ってもらう」、「見て感じてもらう」、「実際に来て関わってもらう」、「移住・定住してもらう」というステップで人を呼び込む仕掛けを考えてきた。
ガソリンスタンドの経営や、自社ブランド牛「丹下牛」の生産とそれを提供する焼肉店などを展開。創業当初からまいてきた種が芽吹き始め、昨年から今年にかけて、生家を改装した高級宿、ビジネスホテル、レジャー施設の運営、福山シティFCのユース学生寮への食事提供などを相次ぎスタートした。
目的から逆算、突破口開く
町に分娩施設がなかったことから、産婦人科を誘致。病床が確保できないという壁にぶつかったが、助産院を隣に設ける形で実現にこぎつけた。また、ユース寮の事業では町や地元高校と連携。福山シティFCはユース創設に向け、寮とグラウンドを必要としていた。そこで、町にグラウンド整備を働きかけ、その持ち出し分は当社がネーミングライツとして補填する仕組みを提案した。ユース生が町に住めば、生徒数が減る高校の存続にもつながる。よく周囲に「ウルトラC」と言われるが自分としてはゴールまでの道のりを考え続けているだけ。目的さえしっかりしていれば、必ずルートは見つかる。やるか、やらないか。それだけだと思う。
95%は失敗
もっとも、挑戦の95 %は失敗に終わっている。創業当初に計画した東京のアンテナショップは、提供商品がまとまらず白紙に。町内の大型商業施設は目玉だったテナントの誘致がうまくいかず中止した。どぶに捨てた額は2億円以上になる。試行錯誤を経て、小さく始めて検証するスモールスタートの方針に変えた。こうした失敗もすべてラジオ番組などで公開している。モデルケースを示し、各地で実践してほしいとの思いがある。
現場を感じることも欠かさない。焼き肉店の開業時には駅前で交通量調査をし、エプロンを付けてホールや厨房にも立った。現場で数字を体感しないと課題も解決策も見えてこないからだ。
収益化はこれから
会社全体は黒字だが、収益化が道半ばの事業もある。今年はそれぞれの事業でPDCA(計画・実行・評価・改善)を回してきちんと利益を出すのが目標。新たなプロジェクトも進行中で、神楽や広島の食材を楽しめる東京・元麻布の料亭のほか、キャンプ場を改装して蜷川実花さんプロデュースの花畑を計画している。人口減少の中でも地域は自立できる。そのモデルを神石高原町でつくりたい。