広島東洋カープ/ 福地 寿樹 一軍打撃チーフコーチ
まずはやってみなさい
伊藤 最近の選手とのコミュニケーションで感じることはありますか。
福地 全員ではないですが、何となく言葉から〝逃げ道〟を感じる選手はいます。不得意なこと、やりたくないことに対して、できない理由をつくってしまっている。指導者からすれば、そこが一番やってほしいポイントなのに、です。
一流選手は、まず自分の穴を徹底的に埋めて隙をなくそうとします。そして長所をさらに伸ばすのです。若い選手はなかなか、その過程の重要性に気付けないので、時にはコーチが無理やり引っ張り込むこともあります。田村俊介が一例ですね。

塩田 一時は日本代表にも選ばれましたが、伸び悩んでいる印象です。
福地 彼はいろいろな情報を取り入れてしまうタイプで、芯が定まっていないように感じました。なので昨秋のキャンプで一つの課題を与え、それに専念しなさいと伝えました。
伊藤 若い世代は情報過多になってしまいがちですよね。
福地 どんな選手になりたい、という理想がはっきりしていれば、ユーチューブを参考にしてもいいと思うんです。ただ、実際はそうではないことも多い。いつ考えのズレに気付くのかなと思いながら、何日、何週間と過ごすことはあります。
塩田 すぐ修正しないのですか。
福地 選手の意思でもあるので、頭ごなしに否定はしません。うまくいかなかったとしても、それが引き出しの一つになる場合もありますから。そして何よりも、自分で試行錯誤し、理解する経験をさせることが大切だと思っています。
例えば、まだ基礎ができていない段階の打者が、一流選手の話に感化されることがあります。話を聞くのは大いに結構ですが、トップ選手の思考はシンプル化されているケースが多いです。なので当然、同じようには打てず、悩みます。それでも「まずはやってみなさい」というのが私のスタンスですね。
塩田 私たちも福地さんと同世代ですが、昔とは全く違う手法ですね。
福地 私の現役時代は、選択肢がなかったですからね(笑)。何も分からず言われた練習をこなすだけでした。今の選手には、この練習の狙いはこうだよ、と事前に説明して腹落ちさせます。加えて、取り組む中での対話を通じて選手の気付きや感覚の変化を取り込むようにしています。
PROFILE
福地 寿樹
1975年12月17日生まれ、佐賀県出身。93年ドラフト4位でカープ入団。3球団目となったスワローズで2回の盗塁王に輝いた後、指導者の道へ。2023年にファームの打撃兼走塁コーチとしてカープ復帰し、今年から1軍打撃部門を統括する現職に就いた。