マツダは4月1日、南区大州の同社体育館で入社式を開き、晴れやかに総勢508人を迎えた。ステージ横にロードスターと、1930年代に造られた三輪トラックを並べ、創立105年の歴史を表現。毛籠勝弘社長は、「社会人生活のスタートに当たり、自分の未来を描く。私からの提案です。20代で何をしたいのか、30〜40代をどう生き、50代でどんな自分になっていたいのか。仕事では技術を極めるスペシャリストか、それとも幹部を目指すのか。今、何をしたらいいか分からない人も、まずは考えること。そのプロセスが大切なのです。私自身も若い頃の想像とは全く異なる道を歩んでいますが、当時を振り返ることで、自分の原点を再認識できるのです」開式前の待ち時間には神楽団が舞を披露。全国から集まった新入社員に伝統文化を知ってもらい、広島への愛着を育む狙いという。彼らが長く、力強く活躍してくれることがマツダはむろんのこと、街を元気にする原動力になる。

レシピ動画の威力

SNSを駆使するマーケティング戦術が当たった。スプラウト(発芽野菜)生産の村上農園(佐伯区)は、前12月期に過去最高の売り上げ113億円を計上。同社食材の料理方法を紹介する動画が拡散され、販売を後押しした。共働き世帯の増加に伴い、簡単に調理の手順が分かる〝レシピ動画〟の人気とうまくマッチ。同社のユーチューブチャンネルは2020年の開設から登録2万69000人、合計視聴880万回となり、影響を増す。健康志向を受けて看板商品のブロッコリー(スーパー)スプラウトは昨年、SNSのトレンド入りするほど注目を集めた。今年2月末に主婦の友社が発刊したレシピ付きの特集本など、多くの雑誌や情報番組でも取り上げられている。村上清貴社長は、「がん予防の成分に加え、抗酸化やミトコンドリアを元気にする効果も期待できることが大学などの研究で判明。これで勢いが付いた。毎日の食習慣としてもらえるよう広めていきたい」人のためになる商品を作り、広告して多く売ることを善とした近江商人の時代から引き継がれている商いの鉄則なのだろう。

ミナモアに共創拠点

3月24日開業した広島新駅ビルの商業施設「ミナモア」3階に物販や飲食を兼ねた共創拠点「ミオバイドッツ」がオープン。記念イベント「縁側ピッチNIGHT」に144人が集まった。開業に携わった経営者や学生ら31人がリレー形式で講演。4時間にわたり、それぞれの思いを語った。運営母体のDoTSは昨年6月、広島ホームテレビ、広島ベンチャーキャピタル、企画コンサル会社ミナサカの共同出資で設立された。県内23市町の商品を展示する棚を設けたほか、ほぼ毎日夕方15分ほど県内外で活躍中の個人や団体によるピッチイベントなどで地域の魅力・情報を発信する。講演で砂谷副社長の久保宏輔さんは、「いろいろな人と出会い、思いを語り合うことが大切だと思う。理想の牧場をつくる仲間探しにつなげたい」DoTSとミナサカの代表を兼務する谷口千春さんは、「学生や企業、行政も含め、みんなで地域プロデューサーの役割を果たし、地域を盛り上げていきたい」京都大学・東京大学大学院で建築学修了。2020年帰広し、実家の園芸事業跡地をリノベーションした「ミナガルテン」がひろしま街づくりデザイン賞、グッドデザイン賞(まちづくり部門)を受ける。広島都心会議「都市toデザイン」企画ディレクターを務めるなど活動領域を広げている。

経済複雑性で世界一

経済協力開発機構によると、日本の1人当たり労働生産性は加盟38カ国中32位。中小企業再生支援を手掛けるプライベートバンカー(上野英雄代表)は3月25日、労働生産性や中小企業支援などをテーマに、中小企業診断士らとの意見交換会を開いた。講師を務めた共同通信社の橋本卓典編集委員は、想像上のものを具現化する力の指標である「経済複雑性」について話した。「耳慣れない経済指標だが日本は20年以上、世界一。膨大な工程の商材に加え、無料で無用なおもてなしを管理できていないことが、生産性を低下させている。採算を把握する管理会計の徹底が必要ではないか」

ふらっと立ち寄る

ミナモア開業で活気づく広島駅周辺。テラスホールディングスは5月まで、南区松原町の広島JPビルディング2階で運営する大型フードホールに加え、同ビル1階の飲食4店舗、郵便局と広島大のコワーキングスペースを周遊するイベント「ビルバル」を開く。スペインのバル(バー)文化を模したスタイルで店舗、施設をふらっと立ち寄り、会話や交流も楽しみながら巡ってもらう趣向。専用のチラシを持参するとドリンク1杯無料など各店の特典がある。3月21日は午前7時半から約1時間、同フードホール初のモーニングセット付き「朝活イベント」を開催。20〜60代の約20人が参加した。昨年末の書評合戦「全国大学ビブリオバトル」に出場し、準グランプリとなった「四日間家族」を紹介した叡啓大学ソーシャルシステムデザイン学部4年の豊崎花さん、エールエールA館ジュンク堂書店の三浦明子店長をゲストに活字の魅力や読書の素晴らしさ、書店の楽しみ方などを語り合った。ビル2階をペデストリアンデッキで新駅ビル、エールエールA館とつなぐ計画が具体化すると、さらに回遊性が高まる。「今回は〝本〟でしたがテーマを変えて継続したい。駅周辺が一体となって魅力あふれるエリアへ発展していくよう、その一助となれば」(同社広報)

大幅に離職者減る

厚労省調査によると宿泊業、飲食サービス業の離職者数は年1422万人に上り、全産業のうち最多。ホテル業界はインバウンドの急回復などから人手不足が加速している。こうした中、中区上幟町の「ホテルフレックス」を運営するきっかわ(中区)は、直近4年間の離職者がわずか1人にとどまり、大幅に改善したという。2016年に4代目に就いた高橋伸光社長は、「コロナ禍が大きなきっかけになった。先が見えず不安だらけだった当時、社員に将来ビジョンを語り、何としても社員の雇用を守ろうと決意。事業再構築補助金やクラウドファンディングを活用したほか、私自身は大幅減俸。1日たりとも休むことなく営業し続け、何とか苦境を乗り切ることができた。そうした懸命な思いが届いたのか、みんなの士気も大いに高まった。昨年度は社員20人のベースアップを実施。本年度を〝教育元年〟と位置づけ、さまざまな外部研修に参加してもらいます。人を大切にする経営こそ全ての原点。今後も積極的に人材へ投資し続けます」

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