西日本に「ゆめタウン」などを展開するイズミ(東区二葉の里)が4月1日付のトップ人事を発表した。山西泰明社長が代表権のある会長に就き、町田繁樹副社長が社長に昇格する。32年ぶりの社長交代になり、創業家以外からは初めて。創業者の故山西義政さんが1961年に中区八丁堀へ中四国初のスーパー1号店を開業したことに始まる。義政さんの娘婿で2代目の山西社長は93年に就任以来、九州事業に乗り出し、大型店などを積極的に出店したほか、M&Aも含めて業績を伸ばした。32年間にわたり陣頭指揮を取り、2024年2月期の連結売上高は4711億円。

3代目を継ぐ町田副社長は、人口減やあらゆるコスト増に臨み、「まずは収益性を高めたい。昨年8月に西友から買収したサニーの運営手法を取り込み少人数体制で生産性を上げていく。イズミはディスカウント店が強い九州市場で影響を受けることなく価値と総合性を発揮し、支持されている。福岡、熊本を主力エリアに出店余地は十分ある」2030年に300店舗体制、売上高1兆円を目指す規模に育て上げた山西社長は、創業者との出会いが一番大きかったと振り返る。繊維の地方卸問屋からスーパー経営に乗り出したときのひらめき、その後トライ&エラーを繰り返しながら不屈のチャレンジ精神で流通界の大波を乗り切ってきた。「自前の得意分野に全国チェーンの専門店を組み合わせた大型商業施設の展開はローカルに前例がなかった。GMSの出店で成果を上げた要因は時代が良かったこと、大店法施行で地元主導がうまく運んだこと、関西に行かず大型店の少ない九州に進出したこと。失敗から学んだことも大きい。山より大きい猪は出ない。先を見て今何をやるのか。そうした積み重ねが実を結ぶ」失敗を恐れないチャレンジ精神を指針としたのだろう。

家族のように

人手不足による倒産が急増している。2024年は前年比81・7%増の289件(東京商工リサーチ調査)に上り、13年以降で最多だった。尾道市因島は06年に2万7500人だった人口が24年に2万人まで減少。島内の企業が人材確保に苦戦を強いられる中、外国人材を先進的に活用する因島鉄工は3月4日、リクルート主催「第11回GOOD ACTIONAWARD」で候補21社から最優秀賞に選ばれた。1998年から外国人採用を促進。信条や文化に配慮し、国別の社員寮を完備するほか、昼休みを活用した希望者向け日本語教室を27年間続けるなど、日本の生活になじめる支援を続けてきた。近年は元技能実習生が母国インドネシアで営む人材紹介会社と連携して採用活動を進め、現在はグループ130人のうち約40人を外国人が占める。また23年9月にはベトナム人従業員3人が造船・舶用工業部門で全国初の特定技能2号を取得。無期限の在留資格を得た。宮地秀樹社長は、「一度は帰国した外国人従業員が島に戻り、再び生き生きと働いている。母国から家族や親戚を呼び寄せる人もいる。国籍を問わず、みんなを家族のように大切にしてきた。会社を支えてくれる人材こそ大事な宝です」同賞はリクルートが「一人一人がイキイキと働ける職場に変える」取り組みを日本中にシェアすることを目指して14年から始めた。

新感覚の日本茶

厳選した静岡県産緑茶の風味に和三盆を使った金平糖の上品な甘さが絶妙にマッチ。グラブマシン(中区広瀬北町)は金平糖入り茶葉「星の甘つゆ茶」を商品化し、4月中旬を目途に発売する。広島感性イノベーション推進協議会と連携し、心や体の反応をものづくりに生かす感性工学を製品開発に導入。〝日本茶とスイーツの融合〟を目指し、3年越しでようやく完成にこぎ着けた。野村貴志社長は、「五感を満たし、感性を刺激する日本茶を追求。感性工学との出会いから新たな価値軸を見いだし、これを取り入れる機会を得た。日本茶の新たな可能性を求めるとともに、急須で入れる茶を楽しむ文化を根付かせたい」75㌘入り、3800円(税別)。両親が営んでいた茶屋関連で起業。国内各産地から仕入れてブレンドしたオリジナル茶葉シリーズ「廣島撰茶」などのほか飲食・宿泊施設向けや土産物、OEM、PBブランドの企画も手掛ける。星の甘つゆ茶は高級スーパーなどでの扱いを予定。

必要とされる喜び

取引先から感謝される、必要とされる喜びが事業拡大を後押しした。2021年に設立し、工務店向けSNS運用支援などを手掛けるトラストリード(中区)は25年3月期で前年比倍増のグループ売上高2億円を見込む。代理店を通した営業活動で成果を上げ、自社開発のSNS効果測定ツールの導入先がここ1年で6000件に倍増。今後、AIが適切な投稿内容やタイミングを薦める機能なども加え、訴求力を高める。昨秋にSNSで評判の良い工務店を検索できるポータルサイトを、今年1月にアプリ版を公開。モデルハウスの見学予約の取り付けを代行するサービスなどで掲載社数拡大を図る。昨夏に分社化したエステ事業は東京・銀座をはじめ、出店を加速していく。江島和城社長は、「社会人になってしばらくは仕事が好きになれなかった。だが、がむしゃらに動いて結果を出し、顧客に心から感謝された時の満たされた気持ちが起業やこれまでの原動力になった。パート含め約30人の従業員にも誰かに必要とされる喜びを感じてほしい。そのためにも26年にグループ売上高4億円、28年に10億円と高い目標を掲げた。一丸で突き進みたい」

紙をネットで補完

紙でイメージしづらい内容をネット動画で補完する戦略が当たった。情報誌「ひろしまの学校」発行のトーク出版(中区)は、ユーチューブ「ひろしまの学校チャンネル」開設から約1年で学校紹介など46本の動画を配信し、合計視聴数10万回に迫る。偏差値で選ばない「君が一番輝く学校」を見つけてもらえる編集を意識。学校の実際の雰囲気や活気ある生徒の姿を視覚的に伝える。私立小学と中学・高校を紹介し、将来の進学先候補などについても考えてもらいやすくした。石田利英社長(69)は、「弊誌は30年にわたり発行。たくさんの学校や最新の情報を一冊に集約し、一番輝く学校選びや教育について考えてもらえるよう心掛けてきた。SNS経由の情報収集が盛んになった今、それを活用していくのは必然の流れ。紙の良さと使い分けながら、チャンネルを通じて情報の出会いやマッチングの場を目指したい」SNSは誰もが手軽に発信できる一方、根拠のない主張も次々と吹き出る。舞台がネットに広がっても、自ら現場を取材してきた正確な情報と信頼が強みとなりそう。

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