用意周到に準備
旧市民球場や広銀本店ビル、最近はミナモアの新名称で生まれ変わった旧広島駅ビルなど中心部の大規模な建物解体をことごとく手掛けてきた桑原組(西区)が用意周到に準備した、新たな工法に挑戦している。1966年に開業した中区立町のひろしま国際ホテルの解体工事を6月11日に着工しており、来年10月末の完了を目指す。桑原明夫社長は、「10年ほど前にゼネコンから計画と予算についての相談を受け、いよいよ準備に入ると気を引き締めました。周辺の道路が狭く、人通りの多い街中での解体工事。試行錯誤しながら安全に解体するための準備や計画を徹底して行った。最上部にある円形の展望レストランの撤去などの難所もある特殊な案件で、採用に踏み切った人力解体は実は初めて。理由は8階屋上に置ける重機の大きさに限りがあったこと(重機のアームが届かない)、展望レストランの構造を実際に見た時に、人の手で斫(はつ)ることが可能だと判断したからです。広島最古参の解体工事業者として、中心市街地のランドマーク的な建築物は、全て任せてもらいたいという自負があります」同ホテルの建て替えを決めた東洋観光の今井誠則社長からは、街中で人通りの多い場所なので何としても安全を最優先にお願いしたい、だからこそ桑原組に決定したと工事の無事を託された。更地にして以降、2026年3月までゼネコンの下で新築に関わる工事にも携わる予定。新ホテルは27年夏の開業を待つ。
海上のサイバー攻撃
海の上もサイバー攻撃への防御を迫られているという。広島商船高等専門学校(大崎上島町)は9月18〜20日に「海事サイバーセキュリティセミナー2024」を開いた。同校の練習船「広島丸」に乗り込み、防御演習なども行った。(公財)日本財団の助成を受けたほか、情報セキュリティー専門のラック(東京)や転職サービスのビズリーチ(同)が協力。全国の情報システム、商船高専学生ら約40人に加え、業界関係者約20人も参加した。実際に海上でサイバー攻撃を仕掛ける側と受ける側に分かれてペネトレーション(侵入)テストを実施。逸見真校長は、「全国に先駆け、昨年度に行ったセミナーをより実践的に進化させた。さらに船員不足が深刻化する中、無人運航船の増加などに対応し、専門人材の育成が急務となっている」企業に勤める人材の知見を生かそうと「副業先生」を公募。サイバーセキュリティー分野に精通した神奈川県在住の2人を採用した。ビズリーチが協力。40歳と39歳で、ソフトウエア開発で培った技術を学生に伝え〝海事DX〟の安全性向上に取り組む。「海運は国内貨物輸送の4割を占める重要な業種。自動運航の技術を高め、省人化や事故防止につなげようとしているが、安全なシステムを構築しなければ乗っ取り被害に遭うリスクを負う。副業先生にはスキルや知識だけでなく、サイバーセキュリティーの重要性を伝えてもらいたい」育成カリキュラム作りの人材2人も同時採用。商船、造船業など多様なステークホルダーとの折衝役として、海事関連教育へのニーズを取りまとめる。
新ものづくり拠点
広島大学は9月18日、東広島市の広島中央サイエンスパーク内に設けた「デジタルものづくりイノベーション拠点」の開所式を催した。マツダの菖蒲田清孝会長ほか、自動車部品メーカーなどから50人以上が集まり、期待を膨らませた。14億円を投入し、一部2階建て延べ2031平方㍍を新設。EV用モーターなどから出る電磁波を調べる専用室や、車載電池の性能アップ・軽量化を目指す研究室、省エネにつながる車内空調の実験装置など、最先端の設備がめじろ押し。大学は自動車の電動化時代に向け、企業との共同研究を加速させるという。越智光夫学長は、「ものづくり広島の発展に貢献したい。ここの研究が起点になり、どんな技術革新が飛び出してくるのか、今からワクワクしている」
脱オーナー経営
3年越しの経営改革が実った。建築用鋼製下地材を開発、製造販売する佐藤型鋼製作所(西区三滝本町)は10月、溶接鋼管最大手の丸一鋼管(大阪)のグループに入る。独自性や優位性のある中小企業を買収し価値を高めて売却するバイアウトファンド運営のベーシック・キャピタル・マネジメントから脱オーナー経営に向けたハンズオン支援を受け、2021年にファンド入り。昨春に人事給与制度を整え、営業利益を賞与に還元する仕組みとし、併せて権限委譲を推進。われわれの手で業績を伸ばそうという意識が次第に根付き、一人一人が主体的に動くようになったという。求人の応募も増えた。大型倉庫建設ラッシュによる需要増や鉄鋼価格を反映した価格改定などが相まって23年3月期は過去最高の売上高24億5051万円、経常利益5億4854万円を計上。引き続き陣頭指揮する佐藤公章社長は、「製品や技術力には自信を持っていた。事業承継を前提に3年前から準備してきた経営改革をほぼ整え、大手との提携交渉が進展。向こう数年の引き継ぎ期間に、さらに業績を伸ばしモチベーションを高めたい」
むすび三種
おいしいごはんと選りすぐりの具材が決め手になり、学生の発想から三種のむすびが生まれた。一つは肉厚の豚角煮とさっぱりの梅しそごはんにふんわり錦糸玉子。美人玄米ごはんには焼きサバと新香、ねぎ味噌を合わせた。厚切りベーコンにほうれん草とコーン入りは、おかかとガーリックバターで仕上げた。イズミはゆめテラス祇園店の「ごちそうおむすび膳七」で10月31日まで販売する。反響は上々という。安田女子大学管理栄養学科の学生と、飲食事業「膳七」を展開する、1885年創業の米卸オクモト(尾道市)が共同開発。世羅産コシヒカリと、それぞれ存在感のある具材の組み合わせが絶妙で栄養バランスにも配慮した。祇園店と大学のある安佐南区の地域活性化に貢献したいとプロジェクトを始動。オクモトは、「膳七事業は多くの方に丹精込めて作られたおいしい米を食べていただきたいと2004年に、当時ダイヤモンドシティソレイユ内アバンセを皮切りにむすび販売を始めた。20年の節目で新たな発想を求めた。共同開発は初めて。これを機に継続させていきたい」県産米や北海道、秋田、岩手のグループ会社を通じ現産地米も扱う。膳七は現在、LECT、イオンモール広島府中内にも展開。
日本の美を競演
やっと朝夕は少し涼しくなった。秋を迎えて美術館はそれぞれの趣向を凝らし、日本の美を競う。広島県立美術館(中区上幟町)は10月4日から12月1日まで特別展「近代日本画の神髄児玉希望-千変万化、驚異の筆力展」を開く。安芸高田市の出身で大正、昭和をけん引した児玉の仏画、北栄画、大和絵、花鳥画、浮世絵、歴史画、油彩画、水墨画など、狩野派や四条派の技法をもとに多彩に展開した画業をその作品約120点でたどる。11月2日に講演会「児玉希望の画業と近代日本画の歩み」、同23日に「鬼になれ-内弟子から見た児玉希望」のほか、10月28日には安芸高田市のゆかりの地でウオーキングイベントがある。ひろしま美術館(中区基町)は10月14日まで特別展「日本画の名作展」を開催中。伝統と革新に挑んだ日本画家の軌跡を秀作約80点でたどる。シーピー化成(岡山県井原市)の所蔵品を中心に横山大観、菱田春草をはじめ新しい技法で独自の画風を確立した戦後の杉山寧、加山又造らの作品も合わせて紹介。もう一つ。東広島市立美術館(西条栄町)は10月15日から12月1日まで、市政50周年の特別展「日本刀の美 大山住宗重と広島ゆかりの刀剣」を開く。宗重の刀剣15振りを初めて一堂に展示する。名刀の景光、虎徹、助廣など刀剣、刀装具なども紹介。刀剣女子が殺到しそう。