頼もしい味方
幸先の良いキックオフになったようだ。仏モンサンミシェル市との観光友好都市提携15周年事業の一環で廿日市市は9月1〜3日、仏シェフを招いて市内飲食事業者や生産者らとの交流会、食事会を開いた。その土地の気候風土に育まれた食や食文化を楽しむ〝ガストロノミーツーリズム〟の推進につなげていく狙いだ。上平良地区で2029年開業予定の観光交流施設へ本格的なフレンチレストランが開業することになれば、提携事業に一段と弾みがつきそうだ。リーガロイヤルホテル広島であった食事会は松本市長をはじめ経済人ら関係者約20人が出席。ワイ・ワイファームのいちご酢、万古渓養魚観光センターの広島サーモン、イチハチファームのネギとカキ、きのこ屋本舗の女鹿平香舞茸、岡村養豚場のもみじ豚、アグリードの冠苺、はつはな果蜂園の大野のはちみつ、ハーモニーの紅茶など地元自慢の食材を生かしたメニューが振る舞われた。モンサンミシェルのあるノルマンディー地方出身のシェフ、ニコラ・ルスールさんは、食材を提供した生産者らを訪問。それぞれクオリティーが高く、料理コンクールで戦える力を備えていると太鼓判を押し、関係者へ橋渡しや販路もあるとエールを送った。まさに頼もしい味方を得た。市内の巴里食堂であった交流会ではガレットやオムレツのレシピを披露した。市は、年度内に両市の小学生がオンラインで観光PRする企画をもっか調整中。
小口取引で活路
食肉加工の福留ハム(西区草津港)は、2025年3月期連結決算で7期ぶりの経常利益黒字化を目指す。製販連携による改善、改革に取り組んできた新たなビジネスモデルを展開していく構えだ。重点事業の一つとして付加価値を高めた商品中心に顧客ニーズを踏まえた小口取引を増やしていく。今春、3年をかけて開発した肉と塩だけで作るソーセージやハム、ベーコンを一部販路で限定発売した。食品添加物なしでうま味成分を引き出す独自製法で、高価格ながら健康を気遣う人に支持されている。今後もこうした高付加価値の商品づくりに力を入れる。昨年度には製造と営業で分かれていた組織を見直して仕入れ、生産、販売を一気通貫で運営・管理する体制に変えた。他部門の業務理解を深めるため、工場長による商談同行などを推進。商品の引き取り日などさまざまな要素を踏まえて判断できるようになり、これまでは受注が難しかったロットでも対応が可能になった。顧客の要望に柔軟に対応することで単価も上昇しているという。福原治彦社長は、「一つ一つは小ぶりでも、小さな積み重ねが強みになる。5年後をめどに経常利益率5%を達成したい」
母校へ恩返し
安芸高田市出身の内藤亨さん(68)が1997年に創業し、2004年に上場(現東証プライム)した駐車場運営のパラカ(東京都港区)は5月、内藤さんの母校である広島大学経済学部の「257講義室」命名権を取得。9月4日に記念セレモニーがあった。「パラカ講堂257」と命名。代表取締役会長を務める内藤さんはカープが初優勝した1975年に当時の政経学部経済学科へ入り、初の日本一に輝いた79年に卒業。その後は東京での暮らしが続いたというが、「年を重ねるにつれ、ふるさとの未来を案じるようになった。2022年に森林保全活動の拠点を兼ねた研修センターを土師ダム近くに開設。植樹や山林整備に取り組んでいる。広島は今、転出超過が課題と聞く。広大の後輩たちには江の川を泳ぐサケのように生まれ育ったところへ戻ってきてもらいたい」講堂入り口横に、IC4デザイン(中区)のカミガキヒロフミ代表が手掛けた縦1・2×横1・8㍍のイラストが掛かる。「以前、カミガキさんが描いた広大の絵を見て、多くの要素が凝縮されていて面白いと感じた。今回のイラストには大学や当社ロゴに加え、広島城、宮島といった県内の名所や安芸高田の要素を入れてもらい満足している。しかし野球とサッカーの両スタジアムを描いていただくよう言い忘れてしまい、少し後悔している」契約は異例の長さとなる8年間。遠く離れて、ふるさとや後輩に寄せる思いは深い。
途上国に学校建てる
マリモホールディングス(西区庚午北)は7月、スイスに本部を置く慈善団体「チャイルド・ドリーム」の日本公式パートナーとなり、寄付や問い合わせ窓口、日本語のウェブサイト(https://childsdream.jp/)を開いた。東南アジアで経済成長と都市化が進む一方、格差拡大から地方では貧困に苦しむ人や学校に通えない子どもも多い。チャイルド・ドリームは2003年に活動を始め、特にメコン川流域のカンボジア、ラオス、ミャンマー、タイで教育と医療を組み合わせた慈善活動を行う。支援を受けた子どもは130万人を超える。個人の寄付は一口1000円〜。昨年は約15億円の寄付が集まり、このうち13%が日本からだった。同社経営企画部係長の宮岡由佳さんは、「経営理念に利他と感謝を掲げ、15年から小・中学4校舎の建設資金を寄付。チャイルド・ドリーム日本サポートデスクとしての活動を通じ、より多くの法人からご支援をお願いし、共に支援の輪を広げていきたい」
地域貢献企業募る
広島県中小企業家同友会の東支部地域内連携推進委員会は8月22日、広島市が推進する「ひろしま型地域貢献企業認定制度」の説明会を開いた。同制度は、町内会などの地域貢献活動に伴う休暇制度の取得実績や、環境美化・子育て支援活動といった人的・金銭的支援を行った企業を市の特設サイトに掲載。認定マーク使用や市の入札制度への優遇措置もある。制度スタートから約2年を経過したものの、認知不足などから登録企業は約20社にとどまっている。説明会では市の担当職員が制度の趣旨を述べ、運用の在り方をテーマに意見交換も行った。企業家同友会東支部の内海祐一郎委員長は、「説明会に参加した企業49社のうち、既に10社以上が貢献企業認定に向け準備を進めている。次回は広島広域都市圏制度に関する説明会を計画しており、中小企業と行政との懇談の場を設けることで、地域の活性化につなげたい」
中小企業の災害対応
地震、台風などの災害対策は大丈夫か。呉信用金庫は、取引先320社を対象に特別調査「中小企業における災害等への対応について」を行った。普段意識している災害は「地震」が189社で最多。「風・水害(台風・ゲリラ豪雨など)」、「火災」が続いた。自己評価で災害の備えは「できている」と「どちらかというとできている」が計173社。事業継続に関する保険加入は財産補償、休業補償のどちらか一方、または両方に加入している企業が65%。建物の耐震は「できている」と「どちらかというとできている」が計46%。ハザードマップの確認は「確認している」が65%で、うち23%が「確認して問題はあったが対策はとっていない」だった。同金庫は、「災害に備えた現預金の保有は売り上げの1〜3カ月分が37%と最多で、同3カ月分以上は34%。災害対策金融支援は55%がコロナ時に受けたことがあるとの回答でした」地球温暖化のせいか、忘れることができないほどに次々天災がやってくる。ご用心。
東広島の森林づくり
東広島市の保有林で環境保全活動を行うANAファシリティーズ(東京)は8月27日、そごう広島店と同市、賀茂地方森林組合の3団体との間で「東広島市森林(もり)づくりパートナー協定」を締結した。ANAはそごうに林1㌶を10年提供。植樹や子ども向け自然教室などに役立ててもらう。ANA担当者は、「ゴルフ場の開発計画が20〜30年前に頓挫した経緯がある土地。今後も環境保護に賛同してくれるパートナーを探します」