発酵食品の魅力を掘り下げた。総合食品卸の中村角(西区)は7月17、18日に開いた秋冬展示会で保存性やうま味、栄養価などがアップする発酵食品を使ったブースが関心を集めたという。健康志向が高まる中、塩辛・明太子やキムチ、酢・みそなどを使ったオリジナルレシピを提案。営業企画部の主任で管理栄養士の岡田真保さんは、「変わり種ですが、焼き芋発酵餡バターはますやみその乾燥米こうじを用い、糖化作用で砂糖を使わずできる粒あんを芋に載せました。食べておいしい、健康にも良い60レシピを当社の管理栄養士6人で考案。調味料として使ってもらい発酵食品の出番を増やしたい」食品の付加価値を高め、メニューにして紹介できる仕事にやりがいがあるという。営業の後方支援として頼もしい存在なのだろう。提案ブースではメーカーとコラボしたオリジナル商品や地域の逸品も。水産加工や常温品ほか、力を注ぐ業務用もしっかりそろえた。中村一朗社長は、「近年、卸先も人手不足が課題になっています。オペレーションに手間のかからない商材などを提案しながら、卸先から支持される問屋の目利き、提案力を磨いていきます」

玩具店「ホビーゾーン」を全国展開する冒険王(安佐北区)が好調に飛ばしている。2025年5月期売上高は初の80億円を突破する見通しだ。地域一番店の大型商業施設内を主力出店先に店舗の大型化、売れ筋や粗利益率の高い商材に絞り込む販売戦略が実を結んでいる。1都2府29県に展開する66店の主戦力はアルバイト。正社員は新卒採用せず、アルバイトから登用する人材確保の仕組みを定着させた。6月1日付で全国を4エリアに編成し各マネージャーの下、事業部制で組織活性化を図る。同日はアルバイトから取締役・東ブロック長になった濱岡潤さんを副社長に抜てき。堀岡宏至社長は、「全ては売り場で接客するアルバイトの腕にかかっている。今33期は店長候補の人材育成に注力。理想とこだわりを持った人を育てることができるリーダーをいかにして育てるのか、ゆるがせにできない命題。そうした店長を今年度は12人輩出すべく店長塾を6月に立ち上げた」Web会議で月1回ディスカッション。コミュニケーションやマネジメントのスキルを養うほか、毎月2店舗のマネジメントレビューを行い、店長に考え方や売り方を共有してもらう。

田中学習会を運営するビーシー・イングス(南区松原町)は、来年4月に創業40周年を迎える。生徒と向き合いながら育てる指導方針が支持されており、県内中心に81教室で計1万2000人規模に拡大した。創業者の田中弘樹さんが自宅で塾を始めた。やんちゃな生徒と自ら駆けっこや腕相撲の勝負を挑み、本気で触れ合う、まさに体当たりの指導ぶり。評判になった。校舎を増やしても教育の質を落とさないよう、各講師に理念を浸透。2020年7月から社長を務める森藤啓さんは、「節目を控え、残すべきものと変革すべきものを見極める。むろん根幹の教育理念はいつまでも変わらない。日々の学習や受験を乗り越える過程で意志を鍛え、精神力を培い、問題解決能力を高め、人間力を持った人材を育成する。誰かを幸せにし、自分も幸せになる。教育、人生の大きな主題だと思います」少子化などで業界の経営環境は厳しさを増し、新しい取り組みも進める。21年10月から事業パートナーに九州最大手の学習塾「英進館」(福岡市)を迎えて運営方法やカリキュラムで互いの良い部分を取り入れた。例えば英進館が成果を上げている無料公開テストや体験授業、学習状況のカウンセリングなどを実施。合格実績を前面に出す方法で評判を呼び、入塾希望者が増える好循環を生む。何よりも子どもたちのためという、揺るぎない理念がある。

東証上場でソフトウエア品質保証のシフト(東京)は7月26~28日、従業員とその子ども向けのキャンプイベントを丹下大社長(49)の故郷の神石高原町で開いた。東京、大阪などから集まった12組がカブトムシ探し、桜の植樹、牛の餌やり、星空観察会、森林公園きのこの森での秘密基地作りなど、アクティビティを楽しんだ。子どもに充実した夏休みを送らせてあげられないと悩む社員を減らしたいと企画。都会ではできない生きた学びを通じて、未来を担う子どもに生き抜く力を身につけてもらう狙いもある。丹下社長は兄と設立した別会社で同町初の複合商業施設づくりに挑むなど並々ならぬ情熱を注ぐ。シフトも木材や花を使うワークショップ、神石牛試食会などを行ってきた。幼少期の原体験は人、起業家に与える影響が大きいという。そうした思いがあるのだろう。

コンクリート二次製品製造のナガ・ツキ(中区吉島西)は、昨年9月に閉店した老舗の手焼きせんべい店「芸陽堂」の経営を継承し、8月1日に本社南隣ビルに店舗を移して再スタートする。芸陽堂は1911年に創業。頼山陽煎餅が長年にわたり親しまれてきたが、立ち退き要請や原材料高などを理由に閉店を決意。しかし、かつてナガ・ツキロゴ入り煎餅を発注した縁から長谷川晴信社長が「このまま消えてしまうのは寂しい」と事業承継を申し出た。社員の畔くろやなぎ柳僚太さんが5代目店主に就く。「根強いファンのいる芸陽堂の味、のれんを守り続けたい。うまく焼けたと思っても割れたりする。一人前になる道のりは険しいが、精進します」焼き型18個を引き継ぐ。味や製法は守る一方、包装紙を自らデザインするなど現代感覚を模索する。

調査会社セールスナウ(東京)は、広島県に本社を置く上場企業の2023年度平均年収ランキングを発表した。調査先の平均年収は約560万円。トップは半導体装置製造のローツェ(福山市) で984・1万円。「世の中にないものをつくる」をスローガンに掲げ、24年2月期売上高は5年前に比べて約3倍の932億円。2位は広島銀行を中核とするひろぎんホールディングス961・9万円。続いて中国電力809万円、建設業のビーアールホールディングス774・3万円、電気設備工事の中電工748・3万円の順。昨今の人手不足や物価高を受けて今春闘は県内でも大手中心に賃上げの動きが目立った。地域雇用を支える中小零細も今後、この流れに乗ることができるか、景気を大きく左右しそうだ。

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