芸備線を生かす
高齢運転者の事故を防ぐために免許証の自主返納が注目される一方、車がなければ満足に移動できない過疎地の生活をどう守るのか。何歳になっても外出を楽しみ、生き生きと暮らす。公共交通の存続は欠かせない。(社)地域研修センター(中区)は7月4日、乗客減で一部区間の存廃が協議されているJR芸備線の活性化策を、県商工労働局に提言。利便性向上に目がいきがちだが、まずは地域全体に新たな経済活動や交流が生まれることが重要という。児玉忠則理事長(81)は、「高齢者を含めて皆が生涯学習に取り組みながら、ソーシャルビジネスなどで起業してもらいたい。交通結節点の駅舎をインキュベーションオフィス(創業した人の事務所)に使い、列車に乗って各地から利用者が訪れる。いっそデイサービスの拠点にしてもよいのではないか。そこで元気になった人たちはJRで隣町の店や観光地を巡る。イベントの開催や情報発信も大切。市民の手で作りあげるべきだと思う」
瀬戸内さかな
こだわり漁師が仕留めた瀬戸内海の魚。腕によりをかけた料理人の包丁さばきで舌鼓を打つ逸品になる。県は市場や飲食店と「瀬戸内さかなのブランド化」を推し進め、その価値を実感してもらうため7月10日、経済人らに呼び掛け、稲茶(中区)で体験会を開いた。魚のうま味、鮮度は漁場、漁法、血抜きや神経締めなどの下処理が決め手。ハモを提供した鹿川漁協の野村幸太さんは、「生息地によっては泥臭くなる。そのため砂地の漁場で底引き網を使い傷つけず、ストレスを与えないよう工夫して出荷している」稲茶の下原一晃オーナーシェフは切り身のハモと広島市漁協の岡野真悟さんから届いたスズキを持ち上げてブラブラ振りながら、「まったく死後硬直がない。うまい魚料理は丁寧な下処理があってこそ成り立つ」炙(あぶ)りや造り、焼きハモの椀、スズキの蓼セビーチェ焼などとペアリングの地元銘酒が参加者をうならせた。県内で唯一ウニを養殖する広漁協の沖田和博さんが、間引き養殖ワカメで育てた安芸灘生ウニも登場。8月末まで「夏の瀬戸内さかな堪能グルメフェア」参加23店で、瀬戸内さかなと地酒セットなどが当たるキャンペーン展開。魚を肴(さかな)に瀬戸内も味わいたい。
スポーツ好き広島県
全国にとどろく「スポーツ王国広島」は伊達(だて)じゃあない。健康関連用品開発のベネクス(神奈川)がまとめた2023年度意識調査によると、スポーツファンの割合が多い都道府県ランキングで広島が3年連続トップを独走する。全国の男女20〜79歳計10万人にインターネット調査を実施。広島は唯一6割台(66%)に乗せ、全国平均を16%上回った。競技別でみるとプロ野球が最多の49・9%。唯一の市民球団カープを声援するファンの遺伝子を引き継いでおり、近年はカープ女子が支える。続いてサッカーJリーグ23・2%、箱根駅伝13・9 %、高校野球13・4%、サッカー日本代表12・5%の順。現地観戦するファンの割合は男性が全国平均の1・4倍の13・0%、女性が同1・2倍の8・2%で、選手を鼓舞する。担当者は、「21年の調査開始から不動の地位を確立。カープをはじめ、プロチームが広島に根付いていることをうかがわせる。サッカースタジアム開業、バスケットボールのドラゴンフライズ優勝に続き、カープ優勝なら県民は歓喜に沸くでしょう」
社長のおせっかい
高速道路向けなど収益性の高い警備に軸足を移し、拡大路線に乗せているテイケイ西日本(中区東白島町)は6月から婚活支援制度をスタート。社会保険労務士事務所から促され、福利厚生の一環で法人契約を結んだ。私のおせっかいかもしれないと前置きし、海田英昭社長は、「一般的に警備員は独身者が多く、当社も例外ではない。家庭を持って生活が安定すれば責任感は一層高まり、仕事に打ち込む意欲もさらに強くなる。警備員860人の年齢は10〜70代と幅広いが30〜40代の適齢期が全体の40%以上を占める。仕事に対する情熱やスキル、コミュニケーション能力を評価し、将来設計を描ける待遇改善に取り組んできた。仕事と婚活の両輪で、豊かな将来を切り開いてほしい」中国5県に営業拠点を増やす中、昨年度は1228人の応募があり、229人を採用した。決め手は協調性と積極性に加え、コミュニケーション能力。婚活もその辺りが決め手になりそうだ。
立ち飲みブックス
〝呑(の)んでから読むか読んでから呑むか〟。紙屋町シャレオ西通りタリーズコーヒー向かいに8月1日、立ち飲みが楽しめる古本屋「立ち飲みブックス」がポップアップで1カ月間お目見えする。広島で一番狭い5坪(16・5平方㍍) の店で、燗(かん)酒のうまさにこだわる東京・渋谷の燗酒場えんらいの選んだ広島の日本酒とクラフトビールをそろえる。ネット販売を展開する古書あやかしや(西区中広町)がSF・ミステリーを、ひろしま文庫(西区東観音町)がサブカル・漫画・映画パンフをそれぞれ選りすぐって提供。紙屋町シャレオを運営する広島地下街開発の担当者と共に企画を練った、ひろしま文庫を運営する本分社社長の財津正人さんは、「街なかの本屋が次々と消えていく現状に危機感を抱いている。万人向けをつくるつもりはなく、ジャンルを絞り込んで好きな者同士にはたまらない世界観を飲みながら、語り合いながら堪能してほしい。試金石として新しい本屋の形態、在り方にトライし、街なか本屋を復活させたい」
明日はわが身
6月初め、出版大手KADOKAWAが大規模なサイバー攻撃を受けた。県内では2月にイズミがサイバー攻撃で仕入れシステム障害が発生し、約3億円の逸失利益があったという。明日はわが身。どうやって情報システムを防御するのか。1月創業したクラウド移行総研(佐伯区)は、中小企業のデータ管理を従来のコンピューター機器に頼る手法から転換し、ウェブ上のシステム(クラウド)で行うための支援サービスを展開している。技術面は、代表者の夫が大手IT企業のエンジニアとして培った知見を生かす。「サイバー攻撃の手口は高度かつ多様化している。自社コンピューターの安全性を常に高く保つのは、専門人材がいない中小企業では特に難しい。一方、クラウドではサービス提供者がセキュリティー環境の強化や改善を担ってくれるのが大きなメリット。少額で必要な機能だけ使えるという要素もあり、試してみる価値はある」(同社エンジニア)企業ホームページを経由した攻撃の実態やセキュリティー対策を伝える無料セミナーを7月26日午後3時に西区民文化センターで、8月にも東区と佐伯区で開く。