深刻化する人手不足と残業規制が相まって、物が届かなくなるのではないかと不安視される「物流2024年問題」。賃金アップで運転手を確保したいところだが、立場の弱い小規模零細の運送会社にとっては原資となる運賃の引き上げ交渉が難しい。中国運輸局は昨年7月に適正取引を促す「トラックGメン」制度を始め、1年間で966カ所をパトロールした。ほぼアポなしで訪れて問題点を指摘し、改善につなげている。このうち悪質な27件を是正指導。荷物を積みにきた運転手を何時間も待たせたり商品陳列などの関係ない作業をさせるほか、運賃の不当な据え置きや過積載の強要などがあったという。計11回のセミナー・説明会では、運賃交渉の進め方や原価計算方法などの実践的な内容にも触れる。貨物課の田中幸久課長は、「むちゃを押しつけ、しまいには商品を丁寧に運んでくれる相手が見つからなくなる。ウィンウィンの関係が続くよう、相互理解が欠かせない」7月11日午後3時〜、イズミの物流事業部長や経営リスクアドバイザーらが登壇するセミナーを三井住友海上広島ビル10階で実施する。無料。(電)082-234-5863。歩み寄りたい。

人手不足が加速し、どの会社も人材獲得にしのぎを削る中、社員の知識・スキル向上がますます重要になり、人を投資対象と見なす「人的資本経営」が浸透しつつあるという。県は7月2日、エディオンピースウイング広島で人的資本経営推進セミナーを開いた。有識者が重要な指標や有効性などを解説したほか、意見交換会では湯﨑英彦知事や八天堂の森光孝雅社長らが登壇し、それぞれの取り組みを述べた。森光社長は1991年に三原市の「たかちゃんのぱん屋」を皮切りに、県内で13店舗を展開と事業拡大を続けてきた一方で、運営を任せられる人材の育成を怠った結果、離職者が相次ぎ倒産危機に陥ったという。「会社の立て直しに向けて新卒採用に一層力を入れるようになり、就職説明会では経営理念『良い品 良い人 良い会社つくり』の目的を入念に伝えるほか、入社前研修や1対1で先輩が新入社員をサポートするメンター、資格支援制度も導入。しかし成長過程と認識している」経営者がいかに危機感を持つか、勝負どころだろう。

旅行情報サイト「じゃらん」を運営するリクルートは6月25日、インバウンドや観光業界の採用最新動向を知ってもらおうと、宿泊事業者向けイベントを市内ホテルで開いた。円安などを背景に訪日外国人旅行者数は過去最高水準で推移。じゃらんリサーチセンターの沢登次彦センター長は、「72%超が東京、大阪などの都市部に泊まり、地方誘客が鍵になる。特に広島は消費額の高い欧米豪の客から人気で商機がある。彼らはそこにしかない『本物体験』を求めている。豊かな自然や歴史、文化を軸に、生産者の思いを学ぶ工場見学、地域の人との心温まる交流などを盛り込めば顧客満足度が高まる。収益性が上がり、観光従事者の待遇や意欲も向上する好循環につなげられる」業界の人手不足は深刻で、同社ジョブズリサーチセンターの宇佐川邦子センター長は、「他業種より10〜20代が多く、離職率の高さからリーダーが育たないことが課題だ。プライベートを重視する傾向が強く、例えばホテルに定休日を設けて社員が連休を取れるようにする、一日当たりの勤務時間を延ばして出勤日数を減らすなど、できるところから取り組んでほしい」

広島大学は初代学長の森戸辰男没後40年記念展示会を霞キャンパス(南区)医学資料館2階で行っている。7月19日まで。写真や遺品、揮毫(きごう) の展示(計29点)を通じて森戸氏の公人・私人としての歩みを振り返る。1888年福山市出身。東京帝国大学法科大学経済学科を卒業後、同大学の助教授として勤務。1920年の森戸事件(クロポトキンを題材とした論文により朝憲紊乱(ちょうけんびんらん)罪に問われ、巣鴨監獄に収監)を経て、46年に衆議院選挙で当選。日本国憲法に生存権の条文を付け加えることを提唱し、大きな貢献を果たした。その後は文部大臣として活躍後、50年に初代学長に就任。同大学の基盤づくりと地位向上に尽力した。84年に95歳で死去。同大学関係者は、「大学が発足して間もない頃、卒業生の就職先探しのために企業に名刺を配り歩いたと聞いています。愛妻家でもあり、海外出張時には妻への手紙を欠かさなかったというエピソードも。森戸が目指し広島大学が目指す姿とは何か、いま一度考える場にしたい」

年を重ねても若々しい人は何が違うのか。心療・美容内科医で、予備校主宰や医療法人理事長を務める長井敏弘さん(71)の新刊「50歳代から脳と体を鍛えなければ、65歳を過ぎて老化は一気に加速する」(南々社)が6月27日発刊された。広島大学医学部を卒業後、全国大手予備校の人気講師として活躍。帰広し心療内科クリニックを開く。大学時代に始めた塾も順調で、地元テレビ番組にもレギュラー出演。多忙を極める50代にストレスで「突発性難聴」と「急性喉頭蓋炎」を患う。自身の経験を踏まえ、適切な運動習慣や免疫力を高める方法、ストレス克服術などを説く。長井さんは、「脳と体を鍛え続け、実年齢より若い見た目と40代の体力を維持する。人間本来の寿命とされる55歳からの10年間に、魂の入れ物である体をいかに手入れするかが重要。心も若く保ち、活力ある日々を過ごしてほしい」

アヲハタ(竹原市)の片手で塗れる低糖度ジャム「スプーンフリー」が第5回「日本子育て支援大賞2024」を受けた。同商品は衛生的で手軽に使えるボトル容器を採用。瓶に比べて軽く、ふたが開閉しやすい、忙しい朝にスプーンなどの洗い物が増えない、子どもを抱っこしながら片手で使える点などが評価された。開発担当者は、「甘さは控えめに、果実の食感や存在感が残るように果肉の大きさを整えました。食パンだけでなく、ヨーグルトやドリンク、アイスクリームなどに幅広く使ってもらいたい。忙しい朝に食卓の定番になれるよう、今後も改良を進めてまいります」

企業などで手形・小切手の決済で使われてきた当座預金の新規口座開設停止が増えている。山口フィナンシャルグループは7月1日から新規口座開設の受け付けをやめ、事業性資金の預金口座を開設する際は普通預金か決済用普通預金を利用することになった。2021年6月に閣議決定された政府の成長戦略実行計画では「5年後の約束手形の利用廃止・小切手の全面的な電子化」が盛り込まれた。従来の手形交換所は22年に業務を終了。全国銀行協会では「26年度末までに全国の電子交換所での手形・小切手の交換枚数をゼロにすること」を目標にする自主行動計画を策定した。山口FGでは、「当座預金口座開設減少もあり、手形・小切手の全面的電子化に向け紙の手形・小切手を使う当座預金の新規受付を停止。既存の当座預金の利用は引き続きできます」

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