新規上場促す
中国地方から株式公開(IPO)を増やそうと、中国経済産業局、広島銀行、東京証券取引所の3者が共同し、6月18日を皮切りに11月まで計6回の「IPO経営人材育成プログラムHIROSHIMA」を開く。全国では毎年100〜130社が株式公開しているが、広島県は過去5年間でドリームベッド(2021 年・東証2部)、NO.1都市開発(23年・東京プロマーケット)の2社にとどまる。かつては中区銀山町に広島証券取引所(00年3月廃止)があり、現在の上場企業数は比較的多い。しかし近年はどういう訳か、新規上場機運が停滞。同プログラムは成長意欲の高い経営者に対し、株式公開に必要な知識や情報を提供するほか、経営者同士や証券・監査など関係先とのネットワーク構築につなげる。東証と上場推進等の連携協定を結ぶ広島銀行の今村徹常務執行役員は、「こうしたプログラムは中国地区で初めて。株式公開は経営戦略の一つの手段だが地域産業への波及効果は大きい。地元企業の成長、発展にできる限り貢献したい」
老舗蔵元の挑戦
日本酒「千福」醸造元の三宅本店(呉市)は5月21日、同社初のノンアルコール飲料「瀬戸内ビアテイストレモン」を発売する。昨年、地元クラフトビール醸造所「IB BREWING」とコラボした「広島クラフトエール」を販売したところ反響が大きく、ノンアルコールのビアテイスト飲料の開発に着手。広島らしさに加えて飲みやすく爽やかな味わいの実現へ、原材料に「瀬戸内産レモン果汁」を使った。デザインは瀬戸内とレモンのポップなデザインとし、背景にビールをイメージし鮮やかなゴールドを採用。若年層や瀬戸内エリアの観光客に訴求する。価格119円(税込)。三宅清史取締役は、「ビターながらも爽快感のある味わいで、カキ料理やお好み焼きなど、広島名物との相性も良い。クラフトビール市場が盛り上がりを見せる中、広島の酒文化・ビール文化を知っていただくきっかけにしたい」1856年創業の老舗蔵元の挑戦に期待。
食品残さ活用
できるだけ環境に負担をかけない循環型社会の実現へ向けた機運が高まっている。アヲハタ(竹原市)は、ジャムやマーマレードなどの製造過程で発生する食品残さを養豚飼料に活用する取り組みを始めた。資源循環型農業を目指す愛媛県越智郡上島町の松浦農場に5月から本格提供し、食品残さの年間発生量約25%の有効利用を見込む。アヲハタ生産管理部の西治彦さんは、「製造品の切り替えや製造終了時に配管に残るものなど、廃棄物となってしまう食品残さは製造量当たり1・5%程度発生。これまでも堆肥化やバイオマス発電の利用などを行ってきましたが、さらなる活用法を模索していました。今後も資源の無駄を『発生させない』、『有効活用する』の両面から取り組みを進めてまいります」
その制度うれしい
働き続けたいと思える会社とは。総合食品卸の中村角(西区草津港)は入社7年目までの従業員を対象に、4月から奨学金返済支援制度を導入。毎月1万円を7年間、給与に上乗せする。昨年、奨学金返済に関する社内アンケートを実施したところ、6人いることが判明。中村一朗社長は、「予想外に多いと感じた。奨学金を借りて学ぼうとする姿勢は真面目で、成長が期待できると考えた。採用活動でも支援制度をアピールし、優秀な人材確保につなげたい」早速、採用面接の場で「その制度はうれしい」と率直な声が返ってきた。働き方改革も積極的に取り組み、4月には4年連続で「健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)」に認定。依然として厳しい経営環境が続く中、今3月期売り上げも過去最高を更新する見通しだ。こつこつと経営改革を図り、決して油断がない。若者から選ばれる経営姿勢こそ成長の決め手なのだろう。
考える力が決め手
経営支援会社ばんそう(東京)と総合印刷・企画・デザインのユニバーサルポスト(西区商工センター)は4月24日、人手不足解消や人口減少社会のマーケティングなどをテーマにセミナーを開いた。ばんそう社長の松田克信さんは、「何でも人手不足のせいにして、思考停止していないだろうか。業務量に人員が追いついていない場合は人材シェアやデジタル活用などによって、専門的な知識を持つ社員がいないときには生成AIで有効な手が見つかることもある。AI活用で大事なのは、課題を見つけて適切な指示を出せる対話能力と考える力。当然、社員教育の在り方も変わる。人材シェアやテクノロジーを使う機会はますます増えてくると思う」ユニバーサル社取締役の前田尚子さんは、「人口が減る一方、価値観や好みはどんどん多様化。個人に合ったマーケティングの重要性が増している。果たしてどんなことに興味を持っているのか、何がしたいのか、その人の立場で想像をめぐらし、より深く洞察することが一番の決め手。発想が浮かんだらキャッチコピーやデザインを考え、タイミングよくDMを発送するなど工夫してほしい」
被災地の猫救う

マツダ社員有志が犬・猫の保護活動に取り組むワンミャツダクラブと北陸マツダ(石川県野々市市)は5月9日、能登半島地震で被災した猫の搬送や一時引き取りを行った。「東京都人と動物のきずな福祉協会」の活動を支援する形でクラブ部員2人が現地に駆け付けた。ペット収容施設から5匹を連れ出し、ボランティア家庭などで健康管理しながら人に慣れるよう訓練する。里親を探すため、6月2日にマツダタウンフェスタ、9日に進徳女子高校で譲渡会を開く。いしかわ動物愛護センターやボランティアの活動で譲渡が進むが、今も20匹以上が里親を待つ。荷堂美紀代表幹事は、「輪島などでは、焼失や倒壊した建物のがれきが野ざらしになった光景が目に飛び込んでくる。人命を守るために、寸断された地域をつなぐ道路の復旧が優先されているからだと思う。人々が懸命に生きる被災地ではどうしても動物の保護に手が回りづらい。何か一つでも手助けしたいという気持ちがさらに強くなった」
中小企業の人材戦略
呉信用金庫は3月上旬に特別調査「中小企業における人材戦略」(取引先330社、回答率97%)を実施。現在の懸念は「高齢化が進んでいる」が37%と最多で、「若手が不足」、「熟練者が不足」、「生産、販売現場で働く従業員が少ない」の順だった。対応策は「中途採用の強化」が44%と最も多く、「新卒採用の強化」、「シニア雇用(定年・再雇用)の促進」、「非正社員の活用」が続いた。人材育成のOJT以外の取り組みは「実施していない」が57%。他は「社内研修会や勉強会(勤務時間内)」、「資格取得等、自己啓発費用の会社負担」が上位を占めた。2024年中の賃上げは35%が予定。引き上げ率では「0%以上2%未満」と「2%以上4%未満」を合わせ全体の3割を占めた。
パラアート発信
木製建材メーカーのウッドワン(廿日市市)は5月15日、知的障害のある絵画アーティストの作品を販売するサイト「ワンズアート」を開いた。社会貢献活動の一環で、昨年から地元出身の20〜30代の作家3人を雇用し、展覧会を開くなど創作活動を支援。彼らの生み出す「パラアート」は、大胆な構図や鮮やかな色調、緻密な筆運びが魅力という。制作風景や購入者の声を紹介するほか、ウッドワン美術館と連携して催しを開くなど、活躍の場の広がりを後押しする。スポンサー企業を募り、将来はアーティストの増員を視野に入れる。