初のデザイン展
どこか温かみのある家具や雑貨のデザインが自然とともに生きる暮らしぶりを思い起こさせる。ひろしま美術館(池田晃治館長)は初めて、商業美術に着目した特別展「フィンランドのライフスタイル 暮らしを豊かにするデザイン」を6月2日まで開く。 独立した20世紀以降、本格的にデザインを産業として確立。シンプルで機能的な椅子や食器は使いこなすほど愛着が増す。アルヴァ・アアルトやアイノ・アアルト、カイ・フランク、オイバ・トイッカ、石本藤雄らデザイナー(1930年代〜現在)による家具や陶器、ガラス製品、テキスタイルなどを集める。池田館長は、「デザインに特化した初の本格的な展覧会です。人口550万人のフィンランドは国連の世界幸福度ランキングで7年連続1位になっている。森や湖などの自然が生活に溶け込み、サステナブルで心地良い暮らしに触れて幸せや生き方のヒントが見つかる機会になれば幸いです」同館ほか3館を巡回。企画を発案した古谷可由学芸部長は、「日常使いのものを作品として展示するひと工夫と時間を要した。これまで全国の美術館に先駆け絵本をテーマにした企画展を開いてきたが、数年前からはデザインをテーマに構想を練っていた。新たな美術ファンを発掘したい」
試練越え、飛躍へ
主に食品用包装資材などを製造する三共ポリエチレン(廿日市市大東)は、2023年12月期決算で売上高85億2000万円、当期純利益8100万円を計上。4年ぶりの黒字となった。創業から68年。第二次オイルショックとリーマンショック前の過去に二度、単年度赤字を経験したが、3年連続赤は初めて。田中寛大社長(49)は、「コロナ禍とロシア・ウクライナ問題は、プラスチックフィルムを扱う当社にとって、前例のない厳しい試練になった。22年半ばに営業スタッフを集め、商品価格の適正化に関する考え、ビジョンを共有。受注生産する数千種類の商品1品1品を丹念に取り上げ、地道な値上げ交渉を行った。今思えば対応が少し遅かったと反省しているが、苦しい時を乗り越え、より強固な組織になったと実感している」28年の完成を目途に廿日市市平良丘陵開発土地区画の工業用地に新工場(敷地約2万6400平方㍍)を計画。今年1月には土地の売買契約が完了し、さらなる飛躍へ一歩を踏み出す。
3世代が着飾る
東広島市志和町の衣料品店「カレンズくらた」で4月19日、3世代のモデルが登場するファッションショーが開かれる。同店を運営するくらたストアー(蔵田すまこ社長)が主催。30〜90代の女性客8人をモデルに起用し、店内に12㍍のレッドカーペットを敷いたランウェイでデモンストレーションを行う。ファッションブランド「クローバーランド」を展開する丸繊(同市)がスタイリング、美容院のフレームがヘアメークを担当。インスタグラムでも模様を紹介する。年齢など吹き飛ばし、さっそうと元気なモデルが話題を呼びそう。蔵田圭子店長は、「町は人口減少や高齢化が進み、客数の回復が見通せない。広島市や西条まで出かけなくても買い物が楽しめると若い世代にも知ってもらい、この地で長く営業を続けたい」ここ数年来、栃木物産展や老健施設への訪問販売なども始めており、顧客との接点づくりに心を砕く。
価値を発信
大野石油グループで70年以上、福山エリアで給油所を運営する山陽石油(福山市)は、フューチャーリンク(千葉)が運営する地域情報プラットフォーム〝まいぷれ〟の福山市エリアを担当し、4月で丸1年。掲載店が100店を突破した。人気店を中心に自治体情報も発信し、地域の活気を生み出すネットサービス。山陽石油の井上友香さんは、「結婚を機に福山市に住むことになったがコロナの時期で知り合いの人も土地勘もなく、どんな店があるのかも分からない。ちょうど会社が新規事業を模索していた矢先、地域情報を発信するネットサービスを提案。事業化が決まり、日々街中を歩き回った。掲載店を募集するインスタのDMや飛び込み営業を続けるうち、次第に街が好きになり、少しでも地域に役立ちたいという思いが募った。反響があったと感謝されるとうれしい。今後もよりよい提案ができるようスキルを磨いていきます」元売り会社に勤めていたが、担当先の大野石油店に縁あって2021年夏に入社。地域に密着した経営方針に共感したという。車コーティング施工技術コンテストで2年続けて県内チャンピオンに輝いた横川給油所がSNSで話題になり県外からも注文を受けるようになった。大野貴嗣副社長は、「届けたい情報が知りたい人に的確に届いているか。ネット社会にあってコンテンツの価値が何より大事という原点は変わらない」
預金金利上昇
日本銀行によるマイナス金利解除を受け、4月から広島でも預金金利上昇が相次いだ。広島銀行は、17年ぶりに円貨普通預金金利を0・001 % から0・02% に引き上げた。定期金利引き上げも予定。もみじ銀行も同様に普通預金金利を上げ、円定期金利も5年物を0・07% から0・2%にするなど引き上げた。広島信金や呉信金、広島市信組も普通預金金利、定期預金金利(5年物0・2%など)を上げた。貸出金利の上昇が懸念されるが、地元金融機関の融資担当者は、「主に大企業向け貸出金利で指標として採用されるタイボー(東京銀行間取引金利)は既に上がっているが、中小企業向けの指標となる短期プライムレートはまだ上がっておらず、連動して貸出金利が上がったという状況ではありません」
街なかへ回帰
福山電業(福山市昭和街)がエフピコRiM1階で運営する複合施設イチ・セトウチに4月3日、北川鉄工所(府中市)が甲山工場からタワークレーン類の設計部門を移設入居した。JR福山駅前に立地し、旧福山そごうのリノベーション再生プロジェクトとして開業以来1年半。北川は9区画分の計275平方㍍に整備した2室と会議室を賃借する。社員28人の通勤や出張が便利になるほか、企業や大学との交流、協業化なども見込んで入居した。施設は飲食、物販、オフィス、コワーキングスペースを備え、セミナーやイベントも開かれる。オフィス区画には約20社が入居し、今回でほぼ満室に。県外企業を含めて入居相談が増えているという。福山電業の島田宗輔社長は、「もともと福山はものづくりの街だが、郊外移転が相次ぎ、駅前などの中心部が次第に空洞化していた。企業の街なかへの回帰はエリアの経済活性化につながる。地元大手の入居がきっかけになればと期待している」