コスモスポーツ復元
今はないからこそ〝逆に新しい〟と感性を刺激し、Z世代たちに昭和の定番品が人気という。レトロブームは度々起こるが、時代を象徴する逸品には人を引きつける魅力があるのだろう。マツダは往年の名車を復元し後世に残す活動に取り組んでおり、3月20日に南条装備工業(南区西荒神町)から1967年発売のコスモスポーツを譲り受けた。これまで、多彩な車種計40台を実際に走れる状態にしている。2015年に初めてコスモスポーツを復元したメンバーの一人、賀浦満晴さんは、「部品交換が必要な250点の全てが廃番だった上、図面も断片的にしか残っていない。当時を知る古株や部品メーカーの協力を受けながら、若手中心に有志20人で作業。技術者の苦心や工夫、こだわりに触れ、今も学ぶべきものが多かった」コーポレート業務本部長の藤家豊さんは、「遺産伝承活動の一環で、マツダミュージアムで展示。エンジン音を聞いてもらうイベントも検討し、広島のものづくりの鼓動を伝えていく」南条装備工業の加藤巧専務は、「前会長の南條泰(77)の愛車で、若い頃に内装の開発に携わり思い入れがあると聞く。ロータリーエンジン実用化は不可能と言われる中で果敢に挑戦した精神を知ってもらうため社内に飾っていた。中計で全員を笑顔にすると掲げており、多くの目に触れる場に出したいと思った」
宮島の観光振興
長い冬が終わり、早や春らんまん。(社)宮島観光協会(中村靖富満会長=やまだ屋社長)は、地域の観光振興に貢献したとして中国運輸局から表彰された。G7広島サミットで宮島を訪れた各国首脳、関係者をはじめ、観光客へのもてなしなどが評価された。昨年は465万人超が来島し、過去最高だったコロナ前の2019年に迫った。3月14日、一日局長に就いたアイドルグループSTU48の信濃宙花さんから表彰状を受け取った中村会長は、「広島サミットは協会としても貴重な勉強の機会になった。コロナ前は欧米からの観光客が多かったが、直近はアジアが増加。多様な文化や言語に対応できるよう、ホスピタリティを高めていく」島の東部にある包ケ浦自然公園では高級宿泊施設の誘致計画が進行中。昨年10月に始まった訪問税制度の影響も少なく、来島者数の記録更新に期待を寄せる。式を終えて一日局長に謝意を込め、宮島特産のまんじゅうを手渡す一幕も。
商業施設に初出店
「進物の大進」を展開する大進本店(中区鉄砲町)は3月15日、広島パルコ新館に雑貨や振り袖などの3店を同時オープンした。これまではロードサイド店が主体で、商業施設への出店は初。山本晋三常務(40)は、「伝統的な進物を多く扱うだけに、若者の多いパルコへの出店は多くの人に驚かれた。昨年9月の創業70周年の記念で何かにチャレンジしたいと考えていた矢先、今年で開店30周年を迎える広島パルコとの間で意気投合し決断。当初は採算面で反対意見もあったが、粘り強く事業計画を練り上げた」進物店としての認知度は高く、老舗の信頼がある一方、敷居の高さに課題も。今回の出店を機に、次の世代へ顧客を広げていく狙いだ。若い社員のモチベーションを高め、主体的に企画に取り組んでくれるなど相乗効果が大きいという。晋三常務は山本茂樹社長の三男で、主に進物店の仕入れ・店舗運営部門を担う。長男の紘史常務(43)は本社で管理部門に、次男の親(ちかし)取締役(42)はグループで写真館運営の大進創寫館の責任者を務める。働き盛りの力が重なり、心強い。
継承と新生
京都市中心部の世界遺産二条城前にある5つ星ホテル「HOTEL THE MITSUI KYOTO」は3月15日から敷地内の天然温泉施設で、伝統工芸「熊野筆」を用いたスパトリートメントの提供を始めた。化粧筆主力の瑞穂(熊野町)のオリジナルブランド「SHAQUDA」の専用アイテムを採用。繊細な毛組と穂先を生かしたドライブラッシングで、リンパの流れを促し、心身をリフレッシュ。五感を満たすトリートメントは体本来の機能に働きかけ、素肌美と活力を呼び戻す効果が期待できるという。瑞穂の丸山長宏社長は、「スキンケアという新しい用途提案とホテルコンセプト〝継承と新生〟が共鳴した。ホテル・ミツイ・ザ・キョウト担当者から直接問い合わせを頂いたことがコラボのきっかけ。海外からの宿泊客が大変多く、日本らしさが喜ばれるという。販売も望まれ、人気のようです。三井家邸宅時代からつなぐ時の記憶を今によみがえらせたぜいたくな空間と、肌に触れる筆の穂先を堪能してもらいたい」75分間2万7800円ほか。6月30日まで。SHAQUDAは高級メイクブラシに欠かせない生産技術を高めた創業者の尺田泰吏氏の職人魂をつなぐ。
調理の道
広島酔心調理製菓専門学校は3月11日に第52回卒業式を開いた。4年ぶりに来場制限をなくし、133人の卒業生が関係者らに温かく見守られながら門出を迎えた。コロナ禍でも学友と手を取り合い、料理作品展やコンクールに励んだ。ローズウォーターレシピアワード金賞や技能五輪全国大会銀賞、全国調理師養成施設協会会長賞など計38人が受賞。原田優子校長は、「コロナ禍のさまざまな制限は、当たり前にできることの大切さに気付かせてくれた。食材やエネルギー費の高騰が続くが、卒業生にはこれから社会全体の背景や仕組みに目を向けてほしい」料理は人間性が表れるとして、技術だけでなく心を磨く教育を重視。開校以来、9000人超を輩出した。
年収表を公開
人手不足が各業界で深刻化する中、建設用鉄骨組み立て工事の山本工業(南区東雲)は2月、入社年数に応じた年収額の一覧を社員に開示した。山本智章社長は、「中小規模の建設業者では珍しい取り組みだと思う。ライフプランを立てやすくなり、給与をはじめとするキャリアアップの道筋を示したかった」年収表は年齢と経験年数から、残業代を除いた毎月の給与を算出。例えば19歳で入社した人は10年目に賞与を含めて406万円になるなど、ひと目で分かるようにした。退職金額や加入保険の種類も細かく明示。モチベーション、定着率向上に期待を寄せる。専門性の高いJISアーク溶接やJIS半自動溶接など有資格者12人が在籍し、特命受注が大半を占める。昨年10月期売上高は5億1966万円と過去最高を更新。10月には若手職人の技術力向上へ、2年ぶり本社で溶接技術発表会を開く。「技術力・業績を支えてくれるのは社員。安心して働くことができる環境整備こそ会社経営の使命です」