労務費の価格転嫁
値上げ交渉は発注する方も、受注する方も重大事。価格転嫁できるか、コスト増を吸収できるか、厳しく経営手腕が問われる。適正取引を推進する中国経済産業局は2月28日、日本自動車部品工業会と共同で講演会を開いた。適正な価格交渉を実現するために受注、発注の間で一体的な取り組みが欠かせない。業務改善やサプライチェーン全体の競争力確保につなげることが一番の狙いと強調した。同局は昨年の価格交渉促進月間後に下請Gメンのフォローアップ調査を実施。9月に改善状況を発表した。自動車・部品業界の価格交渉・転嫁状況は全27業種中20位から8位へと大幅に改善されていた。ただ、原材料費、エネルギー費の転嫁が進む一方、労務費の改善が遅れていると指摘。これを受け、同工業会はホームページで公開中の「原材料・エネルギー等の価格転嫁促進ツール」に労務費指標を追加した。マツダの購買・コスト革新担当執行役員の鷲見和彦さんは、「1〜3次まで協力会社全ての価格交渉資料が網羅されるようになれば取り組みはより徹底される。万全の態勢で臨みたい」
漁師が並べる地魚
食品スーパーのエブリイ(福山市)は4月7日から、数量や大きさなどの問題から市場流通が難しい魚を地元漁師から引き受け、店舗で販売する「鮮魚産直プロジェクト」を始める。同市の緑町店に売り場を設置。事前に登録した漁師約10人に自らパック詰めしたマダイ、ウマヅラハギ、メバルといった取れたての地魚を並べてもらう。調理なしの丸魚がメインで、客の要望に応じてスタッフがおろす。売れ残りの一部はエブリイが買い取って加工・販売する。漁師を募り、実施店舗も増やす。「漁協や漁師と組み、漁業体験イベントや魚を使う料理教室なども予定。地域の食の多様性を育むと同時に、従事者の減少や高齢化などの課題を抱える一次産業の活性化につなげたい」(同社)地元農家が店頭に青果を持ち込む「地縁マルシェ」のノウハウを生かした。生産者の顔が見えて安心などと好評で、加盟生産者は2010年の175件から約4000件に増えた。
経営者の覚悟
企業の30年後生存率は0.02%という国税庁の統計がある。事業の永続に必要な経営者の資質は何か。広島市倫理法人会(石田博実会長)が3月5日開いた令和6年度「倫理経営講演会」で講師を務めた山香煎餅本舗(埼玉)会長の河野武彦さんは体験を交えながら日々学び、自己革新し続けることの大切さを語った。1971年に創業以来、今日まで3度の経営危機に遭う。最初は取り込み詐欺。2度目はクルーザーを購入するなど遊び過ぎたと自戒。その後は仕事と真剣に向き合って業績が上向いた矢先、スナック菓子の台頭で昔ながらの煎餅の人気に陰りが出た。河野さんは、「思いあまって、ようかん製造販売で約480年の歴史を持つ虎屋に手紙を出し、社長さんに会わせていただいた。その時に教わった顧客の創造と革新をどう実践していくのか、日々考え続け、ようやく開発した、おこげせんべいがヒット。各人の運命は各人の手中にあり。その言葉の意味を体験しました」同会は毎週水曜日午前6時から、シェラトングランドホテル広島でモーニングセミナーを開く。
住みやすい街へ
住宅リフォーム・リノベーションのマルコシ(安佐北区落合)社長の木原淳さんは、地元の高陽地区が抱える高齢化や人口減に危機感を持ち、本業の枠を超えて「住みやすい街づくり」活動に取り組んでおり、次第に仲間を広げている。2021年開いた本社1階のコミュニティカフェは子育て世代やシニア層の来店が多く、ワンプレートランチやホットサンドなどをドリンク付き500円で提供。調理士の資格を持つ木原さん自ら腕を振るい、週替わりメニューを工夫する。最近は本社屋前に電光掲示板を設置。地域の公民館などで開かれるギター教室や、連携先で同社発行のクーポン券が使える地域店などを無料で告知・紹介している。地域に自社の資源を開放することで同社公式LINEアカウントの友達登録は4000人を超え、本業との相乗効果も生まれているという。「地域に住む人らが集う、居心地の良いカフェから自然に仲間が増え、笑顔も増える。趣味や暮らし方、地域活動のヒントになる教室が話題に上り、さらに街が元気になる。そうした好循環につなげていきたい」
健康経営の実践
働く人の健康に投資する企業の取り組みが広まってきた。心身の調子を整えて気力、パフォーマンスを向上。併せて業績も上向く健康経営をどう進めていくのか、むろん医学的な見地が欠かせない。メンタル相談などの三十八花堂(中区)社長の保田厚子さんは、血液検査を基にした健康習慣改善研修「保田ホットスクール」で成果を挙げている。ウェブ制作などのフォノグラム(中区)の従業員4人は1年間のプログラムに参加した。血液検査で解析し、食事・睡眠に加え適切なサプリメントを提案。月ごとの面談でアドバイスを受け、日増しに生活の質が改善したという。1月に成果報告会を開いた。保田さんは、「メンバー同士で調子を共有することで、モチベーションをキープできるなど、企業で取り組むことの意義は大きい。一人一人の行動や変化が会社全体に波及し、相乗効果をもたらす。健康に対する意識改革が理想です」
服装も決め手に
桜の開花を控え、企業の新卒採用活動は一段と活発化。売り手市場が続く中、学生の興味を引くアピール合戦を繰り広げている。3月4、5日に広島産業会館であった中四国最大級の合同企業説明会「マイナビ就職EXPO広島」に約300社が参加し、各社独自の工夫が目立った。オフィスカジュアルを導入する企業は専用ステッカーをブースに掲示し、学生を集客する新しい作戦を展開。特別企画で、マイナビ社員が用意したオフィスカジュアルの人気投票もあった。社会人になったらどのような服装で働きたいかという、25年卒向け同社アンケート調査(12月)によると、オフィスカジュアルが最多の46.5%、Tシャツ、スニーカーなどカジュアルなもの20.1%、制服・ユニホーム19.6%、スーツ13.9%の順。社風もうかがえる服装への関心は高いようだ。1月からオフィスカジュアルに踏み切ったシンギ(西区)の採用担当者は、「場面に応じた着こなしを推奨しています。スーツの時と比べて本人や周囲にリラックス効果が生まれるせいか、社内コミュニケーションがとりやすくなったように思う。多様性への理解を深めるとともに、より明るい職場環境につなげていきたい」