東京で仲間づくり
マツダは2月16日、東京都港区の六本木ヒルズ森タワー33階に新拠点「マツダイノベーションスペース東京」を開いた。既成の枠組みを超えて人、技術、知恵、情報が集まり、交差する場を目指す。面積420平方㍍に最大80人を収容。ワークショップができる「共創エリア」のほか、会社説明会、研修向けセミナーエリアもある。当面は人事領域や、次世代交通MaaS事業などに携わる約20人の社員が勤務。新しい価値の創造を図り、IT人材を確保する狙いもある。滝村典之執行役員は、「従来のビジネスの考えにとらわれない、いわばタガを外すための場。スタートアップ企業との協業、人材採用などの新たな仲間づくりに東京が最適と考えた。思いがけない発想が飛び出す環境をつくり、国内外から多くの人を迎えたい」これまでは採用面で地方都市〝広島〟が壁になる例もあったと明かす。マツダの魅力を伝え、若い人が何をしたいのか、双方の橋渡し役も担う。まずは社内研修を通じて生き生きと働く楽しさを体感してもらうことが先決という。
働きがい優秀企業
各国で働き方を評価する専門機関GPTWが認定した県内の「働きがいのある会社」13社のうち、特に優れている優秀企業に5社が選ばれた。県は2021年度から同機関の調査費の一部を助成し、今年で3回目。優秀企業は、▽機械部品販売の大進工機(福山市)▽美容業のタカ・エンタープライズ(中区)▽情報通信のシステムフレンド(佐伯区)▽医療・理化学機器販売のミクセル(中区)▽米・半導体大手子会社のマイクロンメモリジャパン(東広島市)とマイクロンジャパン(東京)。ミクセルとマイクロンは3年連続で、過去3年では計15社を優秀企業に選定。仕事を通じた社会貢献や、充実した福利厚生などが評価され、社員の帰属意識も高いという。初めて認定されたタカ・エンタープライズの小池隆司社長は、「美容業界は女性活躍が欠かせない。どこにやりがいを感じているのか、具体的に知る機会になった。今後も長く楽しく働ける環境づくりに力を注ぐ」3年連続で転出超過が全国最多の広島県。進学や就職で地元を離れた若者が故郷に戻り働きたいと思う会社がもっと増えてほしい。
起業家の成長後押し
スタートアップの成功には明確なビジョンや資金調達、チームづくりなどが不可欠という。日本政策金融公庫は起業家と投資家、事業連携などの希望者を引き合わせる試みを始めた。中国地方では2月19日にピッチイベントをソアラビジネスポートで主催。このほか中国経済産業局と中国ニュービジネス協議会が共同運営するJスタートアップウエストのサポーターを務め、マッチングを促す。日本公庫中国創業支援センターの市原貴正所長は、「岸田総理が新しい資本主義の実現に向けてスタートアップを重視する中、機運を後押ししていく。経済成長や社会課題の解決につなげてもらいたい」ピッチイベントは6社が登壇。インフルエンサーと連携して注文住宅会社に見込み客を紹介するトラストリードの江島和城社長は、「工務店選びにインスタグラムを活用する人が急増。時代に合った販促を広める」1人乗り小型EV開発のKGモーターズ(東広島市)の横山文洋取締役は、「公共交通の減便・廃線が続く地方でも自由に移動できるよう、自動運転のオンデマンド送迎に発展させたい」ライブコマースの全国ふるさとマルシェを運営するアンドピリオドの藤中拓弥社長は、「動画で農家をプロモーションし、地方に光を当てる」
信組職員と勉強会
新型コロナからの回復期に物価高騰や人手不足の影響を受ける中小企業への経営支援スキルを向上させようと中国財務局、四国財務局は2月22日、中四国の信用組合職員と合同勉強会を開いた。中四国の信組職員33人、財務局職員15人が参加。福山ビジネスサポートセンターFukuーBizの高村亨センター長、池内精彦プロジェクトマネージャーが「経営支援の手法と事例」を講演。各班に分かれグループワークと支援策の提案発表も行った。財務局金融第二課は、「信用組合は地域の事業者に最も近い位置で事業支援している。物価高などで経営環境は厳しく、支援スキルを上げ、業績回復などに貢献してほしい」
どん底から挑戦
M&Aで企業文化の違う二つの会社が一つになる。簡単なようで難しい。周囲の猛反対を押し切り買収した会社の従業員の大半が辞めてしまったという。2月14日にあった県中小企業家同友会広島北支部のオープン例会で講演したアイ・エム・シーユナイテッド(安佐北区安佐町)の今津正彦社長は、「1985年に父と弟と3人で創業。60平方㍍の狭いプレハブ工場だった。工業用模型や検査治具の製造で順調に増収を続け、2009年にM&Aを実施。だが、引き受けた従業員16人のうち、14人が退社。仕事が回らず、どん底に落とされた。自分の野望のためだけに会社を買ったのかと勘ぐられ、心ない言葉も受けた。その後同友会に入り、経営を学んだことが大きかった。新卒採用に力を入れ、社員教育は全社挙げて取り組んだ。経営指針書を全社員で作成し共有。合宿でのコミュニケーションなどで理念を浸透させた」年商5億円へ成長し黒字経営を続行中。現在、同支部の支部長を務める。「当時社員から受け取った要望書は今でも戒めとし保管している。一体何のため、誰のために経営しているのか成文化し、行動すべきと思う。経営に正解はないが、同友会で成長企業の事例を学べたことが私の財産です」
黒瀬川を守る
酒どころ東広島西条町を流れる黒瀬川。きれいな景観と水を守ろうと清掃活動を続ける奉仕団体「ボランティアGUTS(ガッツ)」(東広島)が設立10周年を迎え、4月6日に黒瀬川で大規模な清掃イベントを行う。自動車部品設計「GUTS」社長の田㞍浩さん(56)が賛同者らと2014年に設立。年数回のペースで川に散乱するゴミや土砂回収、草刈り、橋脚の落書き消去などに取り組んでいる。今回は水にまつわる地元企業にも協力を呼び掛け、イームル工業、マイクロンメモリジャパン、宝積飲料、ベバストジャパンの社員ら総勢200人以上が参加予定。田㞍さんは、「川には生活ゴミや家電、自転車などが多く捨てられています。管轄は県ですが、人手も資金も慢性的に足りておらず、汚れていても順番待ちで長年放置されている実態があります。活動を通じて一般市民でもやる気になれば地域の大切なものを守ることができる、それを子どもたちに知ってもらいたい。次のリーダーが出てくることを願っています」