転出超過にストップ
総務省の2023年度人口移動報告で、何と広島県は3年連続で転出超過が全国最多になった。県外へ出て活躍するのは結構だが、広島に入る人がそれを大きく下回り、人材不足が加速する企業にとって一大事。ストップをかける手はないか。中国地域ニュービジネス協議会(内海良夫会長)は2月6日、広島アンデルセンで新春経済談義「どうなる広島?〜転換点を迎える地域経済の明日を見つめる」を開いた。中国電力地域共創本部地域経済グループの黒瀬誠マネージャー、ひろぎんHD経済産業調査部の河野晋グループ長が調査情報を基に解説。どうやら広島の景気は回復基調をたどりそうだ。しかし近年は大学卒業者の新卒就職時期にあたる「20〜24歳」の転出超過が著しい。県人口推計によると50年に223万人になり、20年の280万人に比べて47万人減。一つ市が消えてしまうほどの衝撃である。県は新年度、転出超過の要因を探り、社会減対策を再構築する方針。むろん怯んでいる場合ではない。「超ポジティブ思考による日本の将来」と題し、県観光連盟会長も務める佐々木茂喜副会長(オタフクHD社長)は、「地域に根付く企業がスクラムを組み、地域の発展にコミットするベクトルを合わせてオール広島で横串を通すと可能性は大きく広がる。昨年のインバウンド調査で、次に観光旅行したい国はアジア圏や欧米豪とも日本を1位に挙げ、五感に訴える日本の魅力が支持されている。広島は世界に通用するオンリーワン、ナンバーワン企業が多い。ものづくりだけでなく〝仕組み〟を輸出するなど、五感を働かせて新たなビジネスチャンスを創造してほしい」ハワイをはじめ多くの県民が海を渡った広島。進取の気性に富む県民性がある。自然環境にも恵まれている。東京で学び、広島に戻って働きたいと思わせる魅力的な会社が増えることが、転出超過にストップをかける、何よりの特効薬だろう。
今こそ変化の時
国際経営開発研究所によると昨年、日本の人材のデジタル・テクノロジースキルは63カ国中で最下位。DXの遅れを挽回するにはどうすれば良いのか。世界有数の会計事務所デロイトトーマツグループは1月29日、市内ホテルでセミナーを開催。森正弥執行役員がデジタル人材の育成と活用をテーマに、「今後10年で生成AIは世界のGDPを7%増加させる一方、3億人の労働者の仕事が自動化の影響を受けるとされる。一方で、各社の業務のDX化には内部人材のこれまでの経験や知見が不可欠。デジタル環境の整備や手法の推進の役を担ってもらうためのリスキリングや再配置機会を提供することが一層重要になる」サイバーセキュリティー管理や人権への配慮の必要性なども紹介。有限責任監査法人トーマツ広島事務所の平岡康治所長はダーウィンの「種の起源」を引き合いに、「一番強いものや賢い者がではなく、変化し続けるものが唯一生き延びられるという。企業の変化への挑戦を支えるために、われわれグループの総力を結集したい」
サタケの保育室
従業員が仕事と育児を両立できるよう、サタケ(東広島市)は2004年1月に社内保育室「ばん・ぶー」を開設。20年間に延べ約200人の子どもが入室し、その送り迎えに親子で手をつなぐ姿が職場を和ませた。保育事業のアイグランホールディングス(西区)が地域に先駆け、受託運営。現在12人を預かる。雇用形態や期間に関わりなく、6歳以下の未就学児を育てるサタケ従業員は誰でも利用できる。社外保育と併用可能な二重保育制度を採用するほか、近年は子どもたちの潜在的基礎能力の発達を促す音楽教育「リトミック」やグローバル学習の「オンライン英語」なども導入。豆まきや七夕、クリスマス会など、昼休憩を活用して親子で参加できるイベントもある。執行役員人事部長の小林照幸さんは、「育児を理由に退職した従業員は直近5年間でゼロです。開設当初に利用してくれた子どもたちも今は社会人になる年齢になり、サタケに就職してくれる人が現れるとうれしいですね」
出会いをつくる
テラスホールディングス(西区)は2月10日から、広島JPビルディング2階の大型フードホール〝グランゲート広島〟の定例イベントに広島で活躍するDJを起用し、ディナータイムを演出。上々の評判という。第2、4土曜に、SALLYかBalunの2組のDJいずれかが幅広いジャンルからセレクトした音楽を館内に流し、いつもと違う雰囲気で食事やアルコールを楽しんでもらう趣向。企画をした経営戦略部は、「昨年10月に開業したフードホールはレストラン、ビアバー、肉割烹、ベーカリー、グロッサリーの飲食と物販が間仕切りなくつながっている。新イベントは出会いの機会をつくり、店舗同士のシナジー効果や楽しみ方を発見する企画を工夫。非日常感を堪能してもらいたい」レストランスペースとフリースペースで音量を変えるなど配慮する。来春開業予定の新駅ビルは周辺街区とペデストリアンデッキでつながり、JPビルとは2階で直結。広島の文化、人が交流する新たな空間を目指す。
宮島を盛り上げる
大学生の視点で宮島観光を一層盛り上げようと、広島修道大の学生12人が半年間にわたり、島内でさまざまな活性化策に取り組んだ。地域課題学習の一環で、2月16日に活動報告会を開く。英語圏の外国人に日本語でのコミュニケーションを楽しんでもらうため、日本語をローマ字表記したチラシを企画。店舗などでヒアリング調査した結果、レストランでの注文に使える「お薦めは何ですか」など、25フレーズをリストアップ。ゲストハウスなどにチラシを置いた。マルシェの運営にも参加し、手作りしたレモネードを販売。プロジェクトリーダーで4年生の角田和哉さんは、「観光客の満足度をいかに上げるかを重視した。卒業後も、プロジェクトで得た人脈を生かして地域の活性化に携わりたい」
ウサギの島の灯台
〝ウサギに癒やされる島〟の知名度が急上昇し、国内外から多くの観光客が訪れる竹原市の大久野島。周囲4㌔の小さな島の断崖から近海を航行する船舶の安全を見守る高さ5.1㍍ほどの白い灯台が人気という。2016年に日本財団などから「ロマンスの聖地恋する灯台」に選ばれたのが発端。若いカップルの心をときめかせるのか、翌年の観光客数は36万2000人に上り、13年の12万1000人と比べて3倍になった。海洋文化創造フォーラム(東京)などが灯台のシンボルキャラクター「燈(あかり)の守り人」を制作し、1月26日開かれた発表会で今栄敏彦市長は、「今、各地で灯台キャラクターが生まれており、ファンの聖地巡礼で人を呼び込めると期待。関係団体と組み、効果的な活用方法を検討したい」キャラクターの音声ドラマを作り、旧日本軍が島内で毒ガスを製造していた歴史も盛り込んだ。かつては「地図から消された」こともあったようだが、現在は国立公園に指定されている。およそ600羽の野生のウサギがあちこちで愛らしい姿を見せ、平和の尊さを教えてくれる。
ちからのカップ麺
持ち帰りも含め年14万食を販売する、ちからの人気メニュー〝天ぷらうどん〟がカップ麺になった。1月30日から全国のローソン1万4631店(23年2月末、一部店舗除く)で発売。利尻昆布のうまみ、さば節、いわし節のコクと香りが立つ。削り節のもつ燻製の香りを引き出す液体スープを添え、かやくは、えび天、味付揚げ玉、ねぎ。ローソンの全国ご当地名店で監修した中華そばなどに続く、コラボ企画第3弾。ザ・広島ブランド地域特産品認定の「ちからのだし」が底力を発揮している。