シーズン開幕前。正捕手定着かと思われていた坂倉将吾が、右手中指骨折と診断され、出遅れた。さらに控え捕手として安定感のある磯村嘉孝と、左手関節手術明けの石原貴規も出遅れ。一時は〝捕手王国〟と呼ばれていたキャッチャー陣に赤信号が灯ったように見えた。しかし、どっこい。この状況をあまり深刻に考える必要はなかった。プロ野球の世界ではこれをカバーするため、思わぬ副産物が生まれてくるからである。1軍入りを狙う若手にとって、これほど大きなチャンスはない。その前に、カープには球界を代表する優れたベテラン捕手がいる。今季19年目を迎えた会沢翼は昨季、大瀬良大地と森下暢仁の専属捕手を務め、良い結果を残した。いざという時の会沢頼みは今季も変わらない。さらに開幕直前のこと。2軍調整していた石原貴規が、予定より早く1軍に戻ってきた。彼の守備と盗塁阻止力は貴重である。さらに磯村も1軍へ合流した。一方、オープン戦では2人の若手が伸びた。特に目の前で会沢の捕球、リード、振る舞いなどを手本にすることができたのは大きかった。その若手の一番手、清水叶人の進化は著しい。二番手の高木翔斗もまた、将来性を感じさせた。高木は身長187㌢、体重91㌔。この体格は捕手としての貫禄も十分である。さらに三番手の持丸泰輝は既に1軍経験があり、打撃と守備に優れ、2軍では最も正捕手に近い。坂倉の出遅れで、カープ捕手陣の構図がくっきりと見えてきた。もし坂倉が戻ってきたら、カープは再び層の厚い〝スーパー捕手王国〟になれる。

プロフィル

迫 勝則(さこ かつのり) 1946年生まれ。マツダ退社後に広島国際学院大学部長などを務め、執筆・講演活動を続ける。近著は「ヒロシマ人の生き方」

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