まるで国民的行事のようだった東京ドームでの米大リーグ開幕戦のドジャース対カブスによって、一気に日米のプロ野球の花が開いた。その開幕戦で投げ合ったドジャース山本由伸、カブス今永昇太の話題も、この華やかな流れに拍車をかけた。一方、カープの開幕投手は入団6年目の森下暢仁。そこには「これからのカープを引っ張ってほしい」という強いメッセージが込められている。カープ史を振り返ってみよう。2000〜02年に3年連続で開幕投手を務めたのは、自身が監督になった時にその森下をドラフト1位で指名した佐々岡真司だった。その佐々岡の後を継いだのは当時、入団7年目だった黒田博樹。彼は03〜07年の5年連続で開幕戦を投げ、カープ不動のエースになった。彼の翌年の大リーグ移籍により、08年は大竹寛、09年はコルビー・ルイスがその大役を担った。この後に登場したのが、10〜12年に3年連続、そして14、15年の2年連続で開幕投手を務めた前田健太だった。彼は13年にWBC出場のため、カープでの開幕登板を回避している。つまり前田は10年から渡米する15年まで、カープのエースであり続けたのである。その後、16、17年のクリス・ジョンソン、18年の野村祐輔の後を受け19〜23年は5年連続で大瀬良大地が務めた。そして昨年の九里亜蓮、今年の森下へと続く。お気づきの方も多いだろう。この流れからして今季、森下が受け取ったバトンは、ファンが気安く考えているよりも大きい。今季の大きな注目は〝森下のエース力〟である。

プロフィル

迫 勝則(さこ かつのり) 1946年生まれ。マツダ退社後に広島国際学院大学部長などを務め、執筆・講演活動を続ける。近著は「森下に惚れる」「逆境の美学」

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