出場機会に恵まれない選手のために2022年から始まったプロ野球の「現役ドラフト」。23年シーズンは、その制度でソフトバンクから阪神に移籍してきた大竹耕太郎にカープはカモにされた。また同じく細川成也(DeNAから中日へ移籍)にもよく打たれた。2人は現役ドラフトの申し子のような選手だった。
一方でカープが獲得した選手で語れば唯一、巨人から移籍してきた戸根千明が1軍でまずまずの成績を残した。彼は23年シーズンに24試合に中継ぎ登板し、1勝5ホールドをマーク。しかしその後は2軍生活が続き、昨シーズンオフに退団した。
その昨季オフ。カープファンからすると、驚くべき選手が現役ドラフトのリストに上がった。23年シーズンにチームトップの24セーブを挙げた実力派右腕の矢崎拓也が、ヤクルトに移籍することになった。筆者の率直な印象で書けば、ちょっともったいない。彼がこの地位に到達するまで、実に8年の歳月を要したからである。さらに書けば、個性派ゆえの面白さで興味を誘う投手でもあった。彼を慕うカープの若手も多数いた。よく哲学者にも似た名アドバイスを口にしていたからである。
彼が16年ドラフト1位で入団したシーズン、同3位だった床田寛樹は
「新人時代、よくキャッチボールでペアを組んだ。彼の球筋は頭にあるので、打者として対戦してみたい」と真面目に話す。
想像してみよう。ヤクルトの8、9回と言えば清水昇、田口麗斗らである。おそらくここに矢崎が加わってくると思う。今季のヤクルトは、カープにとって手ごわい相手になる。

プロフィル

迫 勝則(さこ かつのり) 1946年生まれ。マツダ退社後に広島国際学院大学部長などを務め、執筆・講演活動を続ける。近著は「森下に惚れる」「逆境の美学」

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事