九里亜蓮がFA権を行使し、前年の西川龍馬と同じくオリックスに移籍した。この制度が始まってからカープでは10選手が権利を行使しているので、九里で11人目となる。その都度、思うことがある。人によって、時代によってさまざまだと思うが、その感情はおおよそ以下に分類される。もちろんFA権は選手の大切な権利だが、①ファンとして許しがたい、②やむを得ない・許せる、③むしろ背中を押して応援したい、この三つだった。私流に書けば、①は1999年に巨人に移籍した江藤智、2007年の新井貴浩の阪神移籍、18年の丸佳浩の巨人移籍。いずれも「やっとの思いでカープの主砲になった直後の移籍」だったからだ。ファンとして「それはないだろう」という感情が強く、広島の街に重苦しい空気が流れた。一方で「やむを得ない」と思ったのは、カープFA第1号となった1994年の川口和久の巨人への移籍だった。彼は東京でご夫人が義母の介護をしやすいように関東の球団へ移籍を希望したのだ。2023年の西川のオリックス移籍も「パ・リーグで自分の打法を試してみたい」との思いにファンが納得した。さらに皆で背中を押した07年の黒田博樹の米・ドジャースへの移籍に至っては、明らかに③だった。多くのファンを巻き込み、後のカープ復帰で感動のドラマを創り出した。この流れで書けば、私は九里に比較的、好ましい感情を抱いている。カープでの11年間、彼は本当によくやった。その経緯や心情についても納得。どこに行っても〝がんばれ九里〟なのである。

プロフィル

迫 勝則(さこ かつのり) 1946年生まれ。マツダ退社後に広島国際学院大学部長などを務め、執筆・講演活動を続ける。近著は「森下に惚れる」「逆境の美学」

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