昨年4月に県内9農協が合併し発足して1年8カ月。組合員18万3406人、職員数2370人(24年7月現在)と全国有数の規模になった。今年6月に就任した田中義彦代表理事組合長に経営方針や注力分野、これまでで印象深い仕事などを聞いた。
―就任の抱負と経営方針は。6月の就任後、県内の13市4町の首長などのあいさつ回りで忙しくしています。全国有数規模のJAになり、合併して良かったと実感してもらえるようにしたい。担い手や法人も高齢化が進んでおり、「地域の維持」がJAの使命だと思う。本部人員は9JA出身の242人と昨年より36人増えました。今年度は9地域本部に常駐していた常務理事を廃止し、職員の統括長、信用共済や総務の部門長、地域営農経済センター長などを配置。現在、25〜27年度の中期計画を策定中で、来年度以降、地域間の人事交流も行う予定です。―合併の手応え、成果はどうですか。1年目の23年度の事業総利益は177億4100万円、経常利益は13億7600万円でした。組合員や利用者のご理解とご協力で一定の成果をあげることができました。課題は貯金残高と、経済事業の収益向上です。農林中金、JA全農などと営農・経済事業効率化プログラムを進めており、例えば肥料は事前予約で6〜7%割り引き不良在庫を減らし、予約率を60%台から70%台へ引き上げることに取り組んでいます。就任時の理事会では出資配当を1%からの増額、職員のベースアップやボーナス増、内部留保の積み上げについて抱負を話しました。伝統的な利益の3配分ですが、経営目標にしています。―営農の注力分野は。年間販売高は180億円規模で、そのうち米は60億円、カンキツは20億円、野菜が40億円規模です。営農指導は専門的で広域指導を行う「専門営農指導員」14人、現場の営農指導全般の「営農指導員」99人、身近な営農相談を行う「営農相談員」4人、経験豊富な農業者やOBが営農相談に加え若手営農指導員の育成を担う「営農アドバイザー」22人の4段階に分け、計139人を配置。自治体やJA全農、JA広島果実連と連携し、府中市上下のアスパラガス、三原のトマト、レモンなどの生産団地を整備し新規就農者支援も行っており、管内の全地域で振興しているナスの作付けも広がっています。直営の産直市は管内に14あり、出荷条件を緩和し広域の作物を販売できるようにしました。旧JA三原管内のせとだ直販センターを平屋687平方㍍に増改築し、レモン、ネーブル、ハッサクなどの販売やシロップなど加工品の販売を強化します。―設備投資の状況は。23年12月に向原支店(安芸高田市)を新築移転、今年3月には大朝支店(北広島町)を町役場大朝支所内に移転。江田島市の中町支店は敷地内に建て替え、26年1月に完成予定です。合併後3年間は、支店やアグリセンター、ライスセンター、育苗センターなどの拠点は維持する決まりですが、今年度から4年目以降の統廃合を含めた拠点再構築を検討。現在、瀬戸田と呉市蒲刈にあるカンキツの選果場は、将来的な再編構想を含めて検討する情勢です。―これまでで印象深い業務は。JA三原の販売課長時代の約20年前に、産直市「やっさふれあい市場」を本郷町に開設。出荷会員農家が一定数を満たしていないなどの反対意見がありましたが、農家を回り出荷農家を増やし開設にこぎつけました。その後06年に三原店がオープン。本郷店は一昨年改装し利用者が増えています。農家の産直市での年間手取り収入は平均40〜50万円ですが、スマートフォンですぐに売り上げが分かるシステムを導入しており、売れる楽しみがあるようです。やっさふれあい市場は100平方㍍もない店舗なので、駐車場や子どもが遊べる施設を併設した年間売上高5〜10億円の大規模な産直市ができたらという夢があります。地域的には大きな産直市がない呉や三次などにもあればと考えています。
プロフィル

たなか よしひこ1958年10月21日生まれ、三原市出身。81年3月に広島経済大学経済学部を卒業し、三原市農協入組。支所長、営農センター長、ローンセンター長、総合企画部長、理事経済部長などを経て、21年6月にJA三原代表理事組合長。23年4月発足のJAひろしまでは購買生活担当常務理事、24年6月から現職。JA広島厚生連経営管理委員会会長、JA広島信連経営管理委員、JA全農ひろしま県本部運営委員などを兼務。
担当記者:大谷