オールスター戦明け。ペナントレースは〝勝負の8月戦線〟に入る。今以上に選手層の厚さが必要な時期はない。それでも新井貴浩監督は「若手の底上げで戦う」と語る。私はこれほど強い意思を持った指揮官を、これまで見たことがない。覚えているだろうか。開幕直後にスタメンで多用されたのは3年目の田村俊介(20歳)だった。2年目の久保修(23歳)にもチャンスを与え、6月には育成ルーキーの佐藤啓介(23歳)を支配下登録した直後に、即スタメンで起用。2022年に支配下登録となった二俣翔一(21歳)も今季、初の1軍スタメンを経験し、そしてすぐに結果を出した。彼はその後、カープベンチに〝なくてはならない存在〟になった。この流れで、現在は2年目の中村貴浩(24歳)がチームを盛り上げている。今季4番が期待されたレイノルズは、1軍で2試合出場しただけで左肩手術のためチームを離脱。外国人選手は1年目のシャイナー、ハーン、5年目のコルニエルの3人だけが、ようやく戦力になりつつあるという状況である。この戦力でよくも…。これが正直な見方である。ところが新井監督は、この状況を逆手に取り、他の11球団に見られない采配をする。彼は「戦いながら育て、強くなる」と、むしろ自信をにじませる。今季、ほとんどのプロ野球解説者が下位予想した新井カープが、ペナントレースの約60%を消化した時点で、堂々とセ・リーグの首位争いをしている。ちょっと気が早いかもしれないが、6年ぶりの〝ひょっとしたら〟は十分にありえる。

プロフィル

迫 勝則(さこ かつのり) 1946年生まれ。マツダ退社後に広島国際学院大学部長などを務め、執筆・講演活動を続ける。近著は「森下に惚れる」「逆境の美学」

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