スーパー、百円均一ショップなどチェーンストアを営む小売業が加盟する業界団体。中四国の企業から初めて会長に就いた尾﨑氏は、メーカーや卸、物流といった他業界とも連携し、人手不足、物価高騰など業界の課題に立ち向かう構えだ。協会の事業方針や業界の展望などを聞いた。

-協会の概要は。1967年に発足し、通常会員47、特別賛助会員20、賛助会員373社(4月19日現在)で構成する。チェーンストアの健全な発展と普及、小売業の経営の改善を通じて、消費者の生活の向上に寄与することを目指している。-どのようなことに取り組みますか。人口減によるマーケットの縮小、働き手の不足、エネルギー・物価高、円安、環境問題への対応など山積する課題に対して、各社の意見、知見を集めて最適解を導き出し、法律・税制に関する要望など政府への働き掛けも行っていく。-労働力不足への対策は。外国人労働者の受け入れと活用範囲の拡大が一つのテーマ。制度上、十分に配慮されている領域もあればそうでないところもあるので、政府に制度の拡充などを訴えていく。また、彼らを単なる労働力として扱うのではなく、地域に根差して暮らしていけるよう体制を整える必要があるだろう。社会保険の適用基準などに関するいわゆる「年収の壁」問題もある。実際はもっと働けるのに、誤った知識から労働調整が行われているケースもある。行政とも連携し、正しい知識を業界や社会全般に伝えていきたい。-物価が高止まりしている。全国の実質賃金が26カ月連続マイナスとなり、物価高騰に歯止めがかからない中、個人消費にブレーキがかかるのを懸念している。消費者はそれぞれに工夫してやりくりされているが、電気やガスといった生活必需サービスは「高いから使わない」というわけにはいかない。これらの非課税化に関する要望を6月に経済産業省に提出したところだ。このほか、喫緊の課題は価格転嫁問題だ。為替の影響や原料の高騰などで商品の安定的な供給が難しくなり、メーカーも卸も物流も厳しい状況にある。そういった中で、スムーズに転嫁が進み、すべてのチャネルで利益が出るような構造をつくりたい。-スーパー業界のあるべき姿とは。安さは消費者の背中を押す手助けになるが、それだけで消費は上向かない。商品に最後の命を吹き込む場として、決まった場所に漫然と商品を並べるのではなく、おいしさを感じられる店頭にしなければならない。食べ方やシーンを想起できるか。生産者の思いが伝わる売り場になっているか。果物の糖度一つとっても12度で陳列するのか、追熟して13度になるまで待って並べるのかで随分変わる。手間はかかるが、そういったことを考えられる余裕がある業界にならなければいけないと思う。-イズミ、ハローズや物流会社との共同物流研究会など、社外との連携を推進している。従来のやり方に固執していては事業が存続できなくなるという危機感がある。一企業や一地域では解決が難しく、川上から川下までサプライチェーン全体で協力関係を築いていくことが重要だ。当協会においても会社や地域、業種の枠を越えて連携し、持続可能な流通業の新しいビジネスモデルを模索したい。例えば、全国各地の農産品の生産量とニーズを統一のデータベースで管理して生産調整を行うことで廃棄や物流の無駄を減らす、共同で使える冷蔵・冷凍庫を各地に設けて収穫直後の新鮮な状態で野菜を保管し、必要に応じて各地に配送する、といったことができるのではないかと考えている。-中四国の企業で初の就任です。中四国を含む地方は都市部と比べて人口の減少率が大きく、事業者は課題感を持っていると思う。会長を任せられたからには、地方から新しい風を吹かせたい。業界が元気になって、働く人たちも元気に頑張れる状態が理想だ。長年、業界に身を置く者として、少しでも貢献できればと思う。

プロフィル

おざき ひでおフジ会長。1951年8月27日生まれ、愛媛県出身。広島大学を卒業し、1976年フジに入社。四国開発部長、常務、専務などを経て、2006年社長就任。18年から会長。経営統合を経て24年3月から現職。5月17日付で日本チェーンストア協会会長に就いた。任期は2年。

担当記者:大島

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