一人乗りの小型電気自動車(EV)を開発するスタートアップで、目標とする2025年の発売に向けて急ピッチで車体・事業開発、資金調達を進める。3月18日に石油元売り大手のENEOS(東京)と協業に関する覚書を結び、22日には3億8000万円の追加の資金調達を発表。今後の展望などを聞いた。ー開発中の車両の特徴は。センターポジションの1人乗りで、全幅がほぼ1㍍と軽自動車よりもはるかに小さい。小回りが利き、ワクワクする移動を実現できる。原付ミニカー規格のため車検が不要で、家庭用コンセントでの5時間の充電で100㌔を走る想定だ。25年1月の発売を目指している。2月に量産に向けた第1号の試作車両を公開。これで基本性能や安全性能など、量産仕様向けに評価を行う目標値を決める。ユーザーに実際に乗ってもらい、その声を開発に反映させる作業をこれから進める。昨年2月に募った事前の有料モニター登録では想定した200件を大きく上回り、5800件も登録してもらった。その方たちのうち、さらにエリアを絞った対象の人に限定し、3月末から先行受注も始める予定だ。

ENEOSと協業

ーENEOSと協業が決まりました。販売店を持たない直販のビジネスモデルを想定しており、販売後のメンテナンス体制をつくる必要がある。そこでENEOSの持つ全国の給油所ネットワークを活用させてもらう構想を描いている。今後、両社で詳細な検討を進めていく。22年にENEOSホールディングスがスタートアップの事業成長を支援するプログラム(モビリティー部門)に採択されたこともきっかけになった。ー資金調達が順調です。3月22日にJーKISS型新株予約権方式で計3億8000万円の調達を発表した。引受先は事業会社ではキーレックスと神鋼商事、投資会社では環境エネルギー投資、広島ベンチャーキャピタル、ちゅうぎんキャピタルパートナーズ、いよぎんキャピタル、NCBベンチャーキャピタルの計7社。昨年4月と10月の調達を含めると総額は6億3000万円に。想定を上回る調達を実現できた。ー「自動車城下町」とも言われる広島で事業を手掛けるメリットは。ものづくりの基盤がある広島で創業したからこそ、今がある。他県では無理だったと思う。ものづくりのスタートアップがもっと広島に集積できる土壌になればと期待している。これまでも地場の部品サプライヤーなど多くの協力を得てきたが、まだ電子部品や、ドアヒンジなど各種部品で必要なものがあり、協力先を開拓している。車両を組み立てる工場用地も探しており、そういった情報があれば欲しい。ー登録者25万人を持つユーチューバーの顔もあります。 18年からユーチューブ配信を始めた。目的は影響力を広げることで、それが狙い通りに進み、多くの賛同者を集めることができた。現在、プロジェクトメンバーは50人規模まで拡大。車体開発はヤマハ発動機、事業開発は本田技研工業から経験者を迎え入れ、心強いチームができた。今後は車両開発、ソフトウエア開発、量産準備、アフターサービスなどの領域のメンバーを強化したい。これから取り組む衝突、耐久などの評価試験も実際の様子を随時公開する。今後もユーザーの不安を払しょくしつつファンを広げるために、動画配信を活用していく。

プロフィル

くすのき かずなり1982年4月25日生まれ、呉市出身。2005年に創業したシーエルリンク(東広島市)を売却し、18年からユーチューブチャンネル「くっすんガレージ」で動画配信。登録25万人を達成し、グーグルジャパンが選ぶ(世界に影響を与える)クリエイター101人に選ばれた。22年にKGモーターズ設立。

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