JA広島果実連の会長が2023年10月、19年ぶりに交代した。牧本祐一新会長に、今後のレモンの生産販売、他の県産果実の振興策、県産果実の生産の課題などを聞いた。ー就任の抱負をお聞きします。少子高齢化で果実の生産者が減少していますが、営農指導、販売企画・販路拡大を強化し、生産者所得を上げ、持続可能な農業に貢献したい。JAひろしまに6人(呉2人、芸南1人、三原3人)、JA福山市2人、JA尾道市3人、JA広島ゆたか2人と計13人の駐在専門員がおり、各JAの営農販売部長・課長たちと振興品目の選定のほか、防除などの営農指導、荒廃地の集約などに取り組んでおり、期待の大きさを感じています。ー本所が竹原市から移転しました。2022年12月に東広島市河内町入野のJA全農広島営農技術センターがある場所に移転。総務企画部、業務部、販売部があり本所の33人が移りました。大久野島の観光客が増えて忠海港の駐車場不足が課題になっており、県からの声掛けで3階建ての本所建屋と倉庫を解体し、約2000平方㍍を県、竹原市に売却。子会社のヒロシマ・コープ(三原市)は2018年の西日本豪雨被災後の復興時に、搾汁、瓶ラインに加え、加工ラインを新設。レモンの皮やオイルの商品化に対応しています。ーレモンの現況と今後の振興策は。12年に広島県や関係JA・市町とレモン振興協議会を設け、レモンの年間生産量1万㌧、作付面積300㌶を目標にしました。災害や寒波があり、23年産の生産量は4642㌧、作付面積は322.5㌶となっています。2年間育成した大苗の配布を続けており、早ければ3年後の収穫を見込めます。全国に食品スーパーが2万2000〜2万5000店あり、自社調べでは期間限定も含め約9000店で販売実績があります。これまでも東京や大阪を中心にバイヤーに産地に来てもらい商談していましたが、レモンはミカンなど他の果実に比べ、売り場面積が小さいため、販売店舗数の拡大に注力します。ーレモン以外の果実の振興策は。いしじは呉市倉橋町発祥で、通常の温州ミカンに比べ甘みが強く贈答用としても人気があり、23年産生産量は3109㌧(作付260.8㌶)と安定しています。ハッサクは尾道市因島発祥で、生果でもおいしく加工用としても有望で、レモンに次ぐ振興商品候補として、月刊「フルーツひろしま」でコラムを連載しストーリー性のある振興策を計画しています。海外向けはブドウ、梨、柑橘類、農産加工品を香港、台湾、マレーシアなどに輸出。コロナ禍ではウェブ商談や産地紹介動画製作による情報提供を行いました。台湾向け梨等の生産園地登録、使用農薬など相手国に合わせた対応を生産農家と共に取り組んでいます。ー担い手育成策は。県果樹農業振興対策センターを12年に呉市蒲刈町に開設し、センター内に宮盛農園を設け、柑橘の研修生の実習園、新技術・新品種やモデル経営の実証を開始。15年に呉市から恵みの丘蒲刈の指定管理を始め、同年に沼隈町果樹園芸組合、JA福山市と沼隈農園を設け、ブドウの担い手育成研修を始めました。18年に鷺浦農園(三原市)のレモン団地・第一ほ場(2㌶)、その後に第二(60㌃)、第三ほ場(94㌃)が完成し、将来は10㌶まで拡大し、年間収量300㌧、売り上げ1億円を目指しています。ー果実生産の課題は。生産面では農園の基盤整備が課題です。沼隈のブドウ団地は土地改良事業で緩傾斜化、新植を行い、園地の平坦化で防除、土づくりなどの機械化が進みました。三次のピオーネ、世羅の梨など県内の有力農園でも基盤整備が進んでいます。高齢化で廃園が増えており、1〜2㌶の小規模な園地の基盤整備を行い、新規就農者や担い手の受け皿にしたい。ーこれまでで印象深い業務は。大学卒業後、農水省の果樹試験場本場(茨城)で桃や梨、興津支場(静岡)で柑橘の研修を受け、1989年〜96年に当時の沼隈農協に駐在。全国で初のベリーAの種なしに成功した「ニューベリーA」が特産で、生産団地の再開発にあたり、地元の生産者部会と毎晩のように換地やかん水、植栽の仕方、栽培品種などを話し合ったのが懐かしいですね。

プロフィル

まきもと ゆういち1963年10月16日生まれ、尾道市出身。広島修道大学商学部を卒業し86年4月に広島県果実連入会。指導課、沼隈農協駐在、芸南農協・竹原農協駐在、業務部大阪支所長、販売部長、代表理事常務などを経て2019年10月から代表理事専務を務めた。

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