昨年の国内カーメーカーは型式認証不正の問題や中国市場での不振にもかかわらず、円安の継続で経営的にはまずまずでした。対して欧米メーカーはEV販売が目標を下回り、工場閉鎖含む戦略の大幅変更を強いられました。さて今年は何に注目するべきでしょうか。

ホンダと日産の経営統合技術協力を一歩進め、経営統合という方向性が昨年末に示され、自社への影響を危惧した方も多かったと思います。今年の株主総会までに具体化しそうな勢いです。両社は商品面、技術面で重なりが多く、効果を疑問視する指摘もあるが、電動化、自動運転、ソフト面の莫大な投資負担を軽減する効果は見込めます。私見ながら「貴族の日産」と「野武士のホンダ」の統合による化学反応に大いに期待したい。EV普及の行方数年前の目標に比較すれば、順調なのは中国市場だけです。欧・米・日はコストや補助金切れ、商品魅力不足などを原因に、いずれも目標を大きく下回っていますが、改善は着実に進んでいます。いや、エンジニア視点で見れば、期待を上回っている印象さえあります。投資を継続しましょう。一方、中国市場ではEV、正確にはPHEVの普及が進んだ結果、BYDをはじめとする中国カーメーカーでは海外進出が生き残りのカギとなりつつあります。その動きに欧米政府は危機感を募らせており、攻防は今年も続くでしょう。米トランプ政権の影響「もしトラ」が現実になりました。既に中国やメキシコ、カナダへの関税大幅増といった発言などで強烈なジャブが繰り出されています。テスラのマスク氏が政権入りすることも要注意です。同社はエンジン技術を持たないEV専業メーカーであるために中国市場で優位性を失っており、新たな変革のすべを求めているとも考えられますし、もっと大きな一歩の布石の可能性もあります。技術面の進化昨年は電動化、自動運転、SDV(販売後もソフトウエアの更新で機能を拡充できる車)などに目立った発表がなく、一時のブームだったかと危惧された方もいるかもしれませんが、技術進化は着実に加速しています。今年は真の実力を蓄え、期待に応えた新装備が登場してくると期待します。マツダの今年昨年でクロスオーバーSUV展開が完成。国内は苦戦していますが、懸案だった米国市場の収益構造は改善しました。今年はこの勢いを継続するとともに、さらなる成長を目指した戦略展開、逆に米新政権によるリスク対応、中国市場の見極め、電動化の加速などが求められるでしょう。極論すれば、今や世界中のカーメーカーが存続の危機に直面しています。今年は巳年。「脱皮しない蛇は死ぬ」。今年も企業が、そして個人一人一人が脱皮を続けることで100年に一度の大変革期を突破しましょう。

プロフィル

平田 栄志自動車メーカーで40年弱、CASE関連などエレキ開発のエンジニアを務め、技術企画として戦略調査分析してきた。本質を捉えた市場分析と現場現物の戦略立案を心掛ける。

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