最先端の技術やサービスで広島のこれからを描くスタートアップ企業を紹介
-事業内容について教えてください。「すべての人に安心と備えを」を企業理念に掲げ、企業や地域住民が手軽に利用できる防災備蓄管理ソリューション「あんしんストック」を提供。足元では首都圏を主体とした大都市部で企業中心に拡大しています。-創業のきっかけは。前職のKDDIで同僚だった私たちが、飲み会中の議論で創出したビジネスアイデアです。2020年4月に発令された緊急事態宣言で、街から食料品やマスク・医療用アルコールなどの買い占めが発生。物が容易に手に入らない状態を受け、「これが地震だったらもっと酷いことになるのではないか」との問題意識を持ったことがきっかけです。二人で調査や議論を深める中、「現在の災害への備えが各人の善意(意識の高さ)に頼ったものとなっており、それを支える仕組みが存在しないこと」が最も大きな問題点であり、「備蓄を自分で持たずプラットフォームを利用する形式であれば、広がるのではないか」との考えに至りました。その後、ビジネスプランの深化と出資元のリサーチを並行し、日本スタートアップ支援協会とサムライインキュベートのアクセラレーションプログラムに採択されたことから、21年に共同創業しました。

-サービス概要は。現在、企業やビルオーナーなどは従業員や帰宅困難者向けの防災用品の備蓄が一部で努力義務化・要請されるなど、安全性確保への社会的責任や事業継続計画(BCP)対応・レピュテーション(評判・信用)リスク対応への重要性が増大しています。防災備蓄への対応は最重要課題の一つである一方、管理工数やコスト・保管スペースの負担が多大など、さまざまな課題を抱えているケースも少なくありません。当社の提供するあんしんストックは、防災備蓄の保管・管理・提供を一括で行う新しい形のサブスクリプション型防災備蓄サービスです。法人の備蓄準備や、不動産管理を担う関係者などの①置く場所がない、②管理が面倒、③気づいたら賞味期限が切れている、といったような備蓄の悩みを一気に解決し、クライアントのBCP(事業継続計画)の高度化、LCP(生活継続計画)の向上に役立ちます。-他社サービスとの違い、強み。防災備蓄に必要となるデジタル(備蓄品管理SaaSシステム)とリアル(備蓄品現物および保管スペース)の各機能をトータルで一つのサブスクサービスとして提供。つまり、購入せずとも月々の利用料(原則、対象人数×100〜400円程度)だけで備蓄品の基本パッケージで準備できるうえ、当社が要望に沿った備蓄品の設置、棚卸作業など管理業務を担うほか、管理システムも利用可能。管理システム、備蓄品提供のいずれかだけを行う企業は存在しますが、ワンストップでの提供は当社が国内初と認識しています。また、水や乾パン、おかゆなどの備蓄品現物に関しても、従来は消費期限が5年のものが主流でしたが、2倍の10年のものを独自ブランド「&mogu」として開発。保管作業の省力化とともに備蓄品自体の圧倒的なコストメリット実現にも成功しました。従来、水や乾パンといった商品ごとにまとめて人数分を梱包して保管しているケースが大半でしたが、これだといざ災害が発生した際のオペレーション上、実効性が懸念されます。弊社ではあらかじめ一人ずつ必要な備蓄品をキットとしてパッケージ化のうえ保管しており、災害時にはそのまま何も考えず配ればよいようにしている点も好評です。一般企業やデベロッパー・ビルオーナー向けにそれぞれ最適化した定型プロダクトを提供するほか、個別企業のカスタマイズプランにも対応。極めて社会的意義の高いユニークなビジネスモデルとして、能登半島地震を契機に、さらに多くの引き合いをいただいています。-導入実績、事例を教えてください。数万人規模の従業員数を抱える大手自動車部品メーカーが、都内の一部事業部のオフィス移転事業にあたり、効率的なオフィスレイアウトや備蓄保管方法を再考されました。その際、あらかじめ提携先の不動産デベロッパーと共同でサービス化していた備蓄管理サービスをご導入いただききました。オフィス専有部には備蓄品を置かないためクリエイティブなスペース活用ができます。一方で各階の備蓄庫や地下の大型備蓄庫に効果的に配置し、ビルオーナーと当社で管理業務を行うことで、備蓄管理工数とコストの削減に成功されました。オフィスビル内の共同備蓄庫ではあらかじめ区画分けしてビルの各テナントに振り分ける仕掛けも展開。これまで第一生命、平和不動産、安田不動産との協業実績があるほか、大手デベロッパーとのプロジェクトが複数進行中です。

-ユーザーからの評価は。いずれも非常に高い評価をいただいており、高い契約維持率(現時点で解約なし)がそれを裏付けています。特に「あんしんストックを導入して備蓄品購入にかかるコストや手続きが一気に簡略化された」、「今後の賞味期限切れに伴う再調達や寄付なども全て任せられるため高度な防災機能が手軽に維持でき、会社にとって強みになる」といった声をいただいています。

-今後の活動について。広島VCからの出資を受け、東京と大阪メインだった営業エリアを広島やその他主要都市に広げていく見込みです。その後は資金調達や協業パートナーの獲得状況が進み次第、個人向け事業や自治体向けサービスの開発を予定しています。
【会社概要・お問い合わせ先】
▼株式会社Laspy
住所:東京都千代田区有楽町1-13-2
設立:2021年2月
TEL:03-6810-2288(代表)
Mail:info@laspy.net
▼(株)広島ベンチャーキャピタル(HVC)
TEL:082 -504-3979
Mail:info@h-vc.co.jp
担当:大江
プロフィル

株式会社Laspy / 藪原 拓人 CEO(写真右)SMBC日興証券、三菱UFJモルガンスタンレー証券を経て、2018年KDDI入社。金融部門の新規事業企画や本体の債権流動化などのストラクチャードファイナンスに従事した。21年2月同社を神山COOと共同で創業。 株式会社Laspy /神山 博史 COO(写真左)07年大和証券に入社。18年にauアセットマネジメントに出向し、投資信託の商品企画を担当。その後KDDIの資産運用業務と経営管理部も兼務。