価値最大化への道のり

3月14号の「値決めの作法」では、商品やサービスの値上げを実施する際、無遠慮に価格を上げるのは危険で、値上げの前段として商品のバージョンアップ、つまり高付加価値の捻出が不可欠だと述べました。今回は続編として商品やサービスをバージョンアップする際のマインドセットについて解説します。あなたが経営者グループの花見に参加するとしましょう。出される弁当は1万円、6000円、3000円の三つのコース。さて、どれを選びますか。ほとんどの方が6000円ではないでしょうか。内容をよく吟味して選ぶならいいのですが、広島人は反射的に中庸を指向する傾向が強い。高い付加価値を生み出すには、この「可もなく不可もなく」という慣れ親しんだ悪癖を捨て去らねばなりません。効果的なのが、クライアントにも勧めている「ハイアンドロー」というワーク。文字通り最高と最低を知るためのエクササイズで、なにが価格差を生み出し、高付加価値、差異化たらしめているのか、分析することを習慣化する。通常の買い物でトライしてみてください。インバウンドの回復で京都の外資系ホテルでは一泊数百万円のスイートも登場しましたが、自分には関係ないとスルーせず、どんな要素が組み合わさってこの価格なのか、ネットで調べ解析するのです。付加価値アップでも値決めでも、とかく売り手側は自分の尺度や懐具合を基準にしがち。ここを脱し、ターゲットとする買い手側の価値空間に入り込むことができるようになれば、どんな高額な商品も売ることは可能となります。自分自身に投資するくらいのつもりで、定期的に「身分不相応」「高嶺の花」にも果敢に挑んでください。本物を見極める目が養われます。私の場合は能楽。京都の一流能楽師に入門し謡と仕舞を学んで5年になりますが、650年の歴史が持つ情報場のエネルギーは世界的に見てもトップレベル。エフィカシー(自己効力感)の向上にも一役買います。飲食店の料理メニューを例に、もう一つ注意点を。付加価値を高めようと無理して高級食材を使う必要はありません。原価が跳ね上がれば収益アップは難しくなる。目をつけるべきは、希少性とストーリー。仕入れ値は同程度でも、その季節しか手に入らないものや、どうやって確保したか苦労話などのエピソードも十分高い付加価値となりえます。お客さまから「気が利いているな!」「面白い」と喜んでいただけそうならバックエンド(高収益品)候補としてテストをお勧めします。

読者の質問

ー社員へのリスキリングで失敗しないコツは。DX導入を視野にリスキリングを実施するケースが多いが、慣れないことを押し付けられてストレスに感じ、出社拒否や離職につながってしまった事例も耳にします。部署別、世代別、性別でカテゴリーをあてがわず、身に付けたいスキルを社員自ら選んでもらってはいかがでしょうか。また苦労して習得したスキルが、アプリの登場によって一瞬で不要になる時代。本当に自社に必要なものかテストも兼ね、一定期間、外注してみるのも有効です。

プロフィル

小林 カズヒココピーライターやアートディレクターを経て、中四国初の本格的なマーケティングコンサルに転身。中小企業経営者や個人事業者へのコンサルほか、金融機関からの依頼で経営が悪化した企業への助言も実施。これまで数十種の業態のコンサルを手掛け、そのスキルの即効性はコロナ禍でも実証されているという。
マーケティング診断や相談先メール(匿名不可):marketingdefense@harukomania.com

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