最先端の技術やサービスで広島のこれからを描くスタートアップ企業を紹介
ー事業内容について教えてください。スマホがカギになる次世代スマートロッカー「SPACE R(スペース アール)」の製造・販売・運営を手掛けています。スマホで予約して使えることに加え、自分自身だけでなく、鍵情報を共有することで自分以外の人がロッカーを開け、荷物を受け取ることもできる点が大きな特徴です。これで、人から人へ、企業から人へといったロッカーを介した〝モノ〟の受け渡しが可能になりました。この技術を活用し、従来のロッカーの常識を変え、新しい〝モノ〟の受け渡しサービスを生み出す挑戦を続けています。現在では、国内スマートロッカー市場で圧倒的シェアを確保。今後もさまざまな提携パートナーと新規事業を展開し続け、さらなる顧客の期待に応えるべく、ワンストップソリューションとしてアップデートしていきます。ー創業のきっかけは。元々、経済発展・技術革新と環境の両立といったテーマや、「エコ」というキーワードに関心がありました。前職では銀座周辺にミツバチを放つことで緑化に貢献しつつ、採取したハチミツを消費者の皆さまに届けるNPO法人を運営。そんな中、フリマアプリの流行で個人間での物の受け渡しが盛んになる中、不要な物を単に捨てるのではなく、他の人に譲渡するという選択肢が新たに生まれてきた点が非常にエコであると感じ、感銘を受けました。一方で、当時から懸念されていた将来的な物流網のひっ迫(いわゆる2024年問題)はますます現実味を帯び、かつ深刻さをさらに増していくことも容易に想像できました。既存物流の効率化・改善では吸収しきれないほどの需要が創出されていく中、これまでとは異なる新しい物流手法が必要であると考えるようになり、特に人が集まる場所に設置されているコインロッカーであれば、そういった物の受け渡しの拠点になりうるのではと考え、創業しました。私や共同創業者の丸山CTOがセキュリティに専門性を持っており、コインロッカーにスマートロック機能を実装する方法をイメージできていたことも、後押しになりました。

ーサービス概要は。従来型の駅コインロッカーは〝荷物を預けられる〟だけでした。コインロッカーの空き時間に目をつけ、鉄道企業との協業で、インターネットで購入した商品を駅のコインロッカーで受け取れるサービス「BOPIS(ボピス)」を展開。同サービスは日経トレンディ「24年ヒット予測」4位にランクインしました。また、オンライン診療の需要増の影響を受け、薬局業界ではDX化の取り組みが加速しています。オンライン診療後の処方箋提出、服薬指導(薬の説明)、決済、処方薬受け取りまでを全てオンラインで完結させ、いつでも気軽にロッカーで処方薬が受け取れるサービスも提供。そのほか新規事業を多数予定しています。

ー他社サービスとの違い、強み。一般的に「ロッカー」というビジネスは、ロッカーを製造するメーカーと、ロッカーを購入して事業を行うサービス提供者で分断されているケースが多いです。スペースアールの場合、メーカーでもあり、サービス提供者でもあります。自らがサービス事業者として他企業との協業モデルを構築し、市場に新たな〝モノ〟の受け渡しサービスを展開。市場で得られたフィードバックをダイレクトにプロダクト(ロッカーとしてのハードウェア、サービスをかなえるソフトウェア)に反映します。これにより、プロダクトの完成度と事業展開スピードが格段に向上します。ー導入実績、事例を教えてください。西武鉄道、西日本旅客鉄道、阪急電鉄、九州旅客鉄道といった鉄道会社の駅など、年間数千扉のペースでロッカーを設置し、面展開を行っています。「荷物の一時預け」という従来の用途でも活用していただけますが、人の集まる好立地スペースである駅にロッカーを設置する以上、「このロッカーで〝モノ〟の受け渡しがしたい」という、サービス提供者さまとの協業も加速しています。ーユーザーからの評価は。日常的な通勤・通学の通過点の駅であらゆる〝モノ〟が受け取れるため、単に利便性が向上したという評価だけでなく、リピート利用の観点からも手応えがあります。具体的に「駅で〇〇が受け取れるようにしてほしい」など、次サービスにつながる声も多くあり、サービス拡張への期待を感じています。

ー今後の活動について。今春から、「駅で預けた荷物が、当日中に宿泊先のホテルで受け取れる」サービスを展開します。従来のコインロッカーは、いったん荷物を預けると、預けたコインロッカーまで取りに戻ってこなければならないことが手間でした。同サービスは荷物を預けて手ぶらで観光し、そのまま宿泊先のホテルに戻ることができるため、サービス利用者からのご支持だけでなく、観光客が増加している主要観光地からも期待されています。県内では尾道エリアの3カ所にスペースアールを設置しました。
■出資の狙い広島県内では既に尾道市内に導入されているほか、広島駅構内や宮島口駅構内にもロッカーが設置予定だと聞いています。ロッカー不足が深刻な広島県で、「駅で預けた荷物が、当日中に宿泊先のホテルで受け取れる」サービスが、観光客のロッカー不足の解消に役立つと考えたほか、「BOPIS(ボピス)」は2024年問題などの解決の一助になると考え、出資しました。
【会社概要・お問い合わせ先】
▼株式会社SPACER
住所:104-0031
東京都中央区京橋1-6-13
設立:2016年7月
Mail:info@spacer.co.jp
▼株式会社広島ベンチャーキャピタル(HVC)
TEL:082-504-3979
Mail:info@h-vc.co.jp
担当:古川・吉田
プロフィル

株式会社SPACER / 田中 章仁 CEO東京理科大学卒業。MENSA所属。在学中からホワイトハッカーグループに所属し、世界中のセキュリティコンテストに参加、世界で上位10%の成績を修める。NPO法人銀座ミツバチプロジェクトの運営・広報活動に従事した後、コインロッカーが新しい物流のハブを担う未来を予見し、同社を創業。