働きがいのある組織づくりを県内に広げようと、県内企業経営者・管理職層が集まり、社員の働きがいを高める意義や取組の実践アイデアを考え、情報発信するイベント(全3回)が市内で開催された。最終回となる第3回は広島東洋カープ元監督野村謙二郎氏が登壇し、チームを率いた経験談を踏まえた講演や、湯﨑英彦広島県知事らを交えたトークセッションを実施。参加者からは、「従業員の働きがい向上」に向けた取組アイデアの発表も行われた。

―人を育て組織を活かすマネジメントチームのモチベーションを維持するためには、組織としての目標やビジョンを共有し、連帯感を創り上げることが重要だ。カープにおけるその旗印は「優勝」だが、全員が同じ方向を向き、パフォーマンスを最大化することは容易ではない。そこで心がけていたのは、選手一人ひとりを孤立させないための「対話」だった。選手時代は、監督と選手をつなぐ中間管理職として、若手や控え選手に声をかけ食事を共にするなど、会話の機会を増やすことを意識した。口数少ない人、とにかく元気な人など、多様な選手と距離を縮めるには対話しかない。そうやって信頼関係を築いた。

また、相手の状況に応じた柔軟な対応も必要だ。監督時代、選手に同じように激励の声をかけても、喜ぶ選手がいれば、そっけない反応の選手もいた。なぜ反応が薄かったのか気になり、後から話を聞いてみると、集中しすぎて声をかけられたことに気付いていなかったと分かった。マネジメントで大切なのは、先入観にとらわれず、相手の個性や状況にあわせて、いかに組織の方針や情報の共有をスムーズに行えるかということだ。また、リーダーには、必ず周りに支えてくれる人がいる。孤独に戦おうとせず、サポートを上手く得ながら、対話できる環境を広げていくことが必要だ。

野村氏の講演を受けて、県立広島大学大学院の木谷宏教授は「働きがいを向上させるためには、信頼できる仲間がいること、そして、仲間との連帯感が非常に重要」と語った。湯﨑知事は「一人ひとりが能力を発揮し、イノベーションを生み出すことが企業価値向上につながる。そのためには働きがいを高める取組が欠かせない。旗を立てることは組織のリーダーにしかできない。経営者のみなさんには、旗を立て、実行に移すために、従業員を巻き込む取組を進めてほしい」と参加者へメッセージを送った。

―参加者による「働きがい向上」取組提案働きがいを向上させるためのアプローチとして「仕事」「職場」「組織」の3分野から、計7グループが、提案発表を行った。▽『仕事』グループ=呉信用金庫の藤元氏は、「クラフティング・マイ・ミッション」というコンセプトを提唱。社員が、自分で仕事をクラフトする(作る)ことが、モチベーション向上や達成感につながるとし、そのためには社員の努力を「見える化」して、評価する仕組みが重要だと発表した。▽『職場』グループ=広島銀行の木下氏は、現代の多様化した職場において、全人格的な繋がり(ホリスティックコネクション)と意味を中心とした対話(ダイアログ)が重要であることを強調。意識的に相手の背景を知る努力や、仕事の意味や目的を明確に伝える工夫が、ウェルビーイング向上に欠かせないと発表した。▽『組織』グループ=川中醤油の川中氏は「一人ひとりが主人公になれる組織」を提案。失敗を恐れずチャレンジし、互いに助け合い、称え合える組織を目指す。具体策として、社長による定期面談や、ホームページ・SNS等を通じて社員一人ひとりにスポットライトを当てる取組が紹介された。

テクノス三原株式会社経営管理室 / 和田 直樹 課長組織を上手に回すためには、リーダーを支える人をいかに大切にできるかが重要だと感じた。当社には100人超の社員がおり、孤立感を感じている社員がいるかもしれない。総務・人事の担当として、自分から積極的に動いて関わりを持ちたい。働きがいは仕事、職場、組織の3つの要素から構築されているが全てつながっており、どれも欠かすことができないと痛感した。コミュニケーションを図る上で、昔は当たり前にあった飲み会などのインフォーマルな交流の場も見直してみる必要がありそうだ。

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