1月31日午前4時半ごろ西区草津港の広島市中央卸売市場で「こだわり漁師」の競りが始まった。飲食店向けを考慮し、毎週金曜日に定期開催していく。   当日は内藤希誉志さん(鹿川漁協)のカワハギ、勝間孝一さん(同)のスズキ、静間久尚さん(同)のサヨリ、小倉祥司さん・留美さん(倉橋島漁協)のヒラメ、延谷昌都さん(阿賀漁協)のサワラなど、競り落とされた魚は漁師の写真とこだわりが分かる札と共に飲食店へ届けられた。肉厚で身が締まった静間さんのサヨリは、キロ1万円の値が付いた。通常の競りは4000〜5000円。初日は全体で平均すると2倍強、その後は1・5〜2倍に落ち着いている。県の「瀬戸内さかなブランド化推進事業」の一環で、市中央卸売市場卸売業者の広島魚市場と広島水産が主催。瀬戸内海は少量多品種の漁場で漁獲量も一定ではなく、流通モデルを維持することが難しかった。そこで同事業は「こだわり漁師」にスポットを当てた新たな競りモデルを提案。評価軸を魚から漁師のこだわりにシフトし、飲食店へ広く流通させてブランドの価値向上を目指す。広島県の海は、多くの魚を育む「ゆりかご」と言われる。瀬戸内海の中でも比較的浅く、干潟や藻場などに魚が産卵にやって来る。季節によって水温の差が大きく、四季折々の旬の魚が豊富に取れる。漁場選びや漁法の工夫、魚の扱いや下処理にも細心の注意を払う漁師のこだわりで、魚の価値もぐんと上がる。競りの魚に添えた札のQRコードから、漁師のこだわりや漁に向き合う姿勢が分かる。出荷先の小売店や料理店でも、こうした情報を介在にすることで口コミの輪が広がり、洗練された料理人の技も一段と磨きがかかる。中央卸売市場の魚食普及委員会委員長を務めるヒロスイの望月亮社長は、「腕利きの漁師が心血注いで取った魚を正当な価格で流通させたいと考えている。デジタル技術を活用しながら、人の手でこそ成り立つ仕事の価値を見直し、漁師のこだわりブランドが県内外へ広まるよう力を尽くします」1月末時点のエントリー漁師は鹿川、倉橋島、深江、阿賀、音戸、広、広島市の各漁協の18人。事業を契機に次代を担う漁師が育まれる効果は大きい。

担当記者:藤井

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事