IT人材が2030年に全国で79万人不足するとされる中、実務を想定した学生向けのプログラミング大会や事業開発体験などの取り組みがIT会社に広がっている。仕事の面白さややりがいを感じてもらい、採用につなげる。デジタルに苦手意識を持ちがちな女子学生向けに、職業体験やバスツアーの例もある。
ドリーム・アーツ(中区大手町)は23年から広島大学とプログラミング大会=写真①=を共催。不具合が生じたアプリを2日間で高速化するアイデアや技術を競うもので、昨夏は文系を含む29人が参加。石田健亮最高技術責任者は「プロジェクトをやり遂げる達成感を持ってもらえたはず。当社の若手に課題アプリを制作させるなど、プロジェクト管理能力も育てたい」と狙いを説明する。過去には参加者からインターン希望者も出た。NTTデータ中国(南区比治山本町)は22年からひろぎんホールディングスと連携し、県内の大学生に5日間の合同講義を提供。対象大学を拡大した昨年は、3大学53人が耕作放棄地と使いたい人をマッチングするアプリなどの事業企画を考えた。児島基司主任は「ひたすらコードを書く仕事と思われがちだが、開発前のプロセスの重要性を伝えてミスマッチを減らす」と話す。会社見学の希望者が出るなど採用面の効果があり、他県でも検討。将来は学生の案の事業化も構想する。

女性向けの取り組みでは、東広島市に工場を構える米半導体大手マイクロンの企業財団がガールスカウト日本連盟と連携し、半導体とエンジニアリングの仕事について学ぶ女子小中学生向けイベントを展開。県内2回目となる昨年は3日間の日程で車型ロボットの組み立てや広島工場の見学、女性エンジニアとの交流などを行った。同社は「ジェンダーの枠組みにとらわれず活躍できると伝えたい」とする。データ利活用コンサルのリジョウイ(中区に広島拠点)は県などと連携し、次世代のデータサイエンティスト育成を目指す米スタンフォード大発のイベントWiDSを20年から県内各地開催。ここ1〜2年は女性限定企画に力を入れる。昨年11月は生成AI活用の観光振興策を考える日帰りバスツアー=写真②=を下蒲刈島で行い、高校生中心に約20人が参加した。昨夏にはAI人材の育成へ地場企業、行政などでつくるコンソーシアムが、高校生を対象に産官学で講座などを行う「ひろしまAI部」も始動。業界を挙げてデジタル技術の可能性や面白さを伝える。
担当記者:大島