広島県はひろしま型スマート農業推進事業で、「気象変動対応型スマート栽培暦とリモートファーミングロボットを活用した施設アスパラガスの高収益で省力的な技術の確立」の実証試験に取り組んでいる。東京大学発ベンチャーのべジタリア(東京)が、事業統括のほか、アスパラガス版スマート栽培暦・病虫害予察システム、立茎管理システム開発などを担当。県立広島大学の甲村浩之教授がアスパラガスの長期採り・冬採り促成栽培での環境ストレスの収量や品質、機能成分への影響などを実証する。酪農学園大学の園田高広教授は病害と生理生態を踏まえた栽培法や病害防除法の実証実用化などを担う。イーラボ・エクスペリエンス(東京)はオープンソースを活用した低価格の遠隔操作AIロボット(ファーミングロボット)を開発し、収穫・粗選別調整・運搬作業の省力化・軽労化の実証を行う。三次市の農家のビニールハウスを実証フィールドとして、ハウス内外の日射量、日照時間、降雨量、風速、CO2量などを測る「ⅠoT気象計」、地温、体積含水率などを測る「土壌複合IoTセンサ」や定点画像モニタリングの「IoTカメラ」を設け、既存の温湿度センサなどと組み合わせて、パソコンなどで見ることができる「アスパラガス・スマート栽培暦」を開発中。緑葉成分トランス2―ヘキセナールの蒸散による高温対策、葉面積相対照度、画像解析を活用した立茎管理で、10㌃当たりの収穫量は従来の1・6倍の4㌧を目指す。収量増、スマート栽培暦や環境制御によるハウスの温度、立茎管理、かん水、防除などで栽培労働時間の2割減と生産者所得率の2割向上を見込む。経営規模は1割増、常時雇用者1人確保(10㌃当たり150万円)なども目標にする。改良立茎法や冬採り促成栽培の確立など新栽培法の開発のほか、品質向上による機能性成分20%向上も目指す。他に褐斑病などの胞子やハダニの発生消長調査などで、温湿度や降雨といった環境要因との関係を明らかにし、適期防除技術と予測技術を開発する。また、ジャガイモの発芽抑制に使用されるポテライトのアスパラガスの褐斑病への効果検証、静電ノズルによる均一防除にも取り組む。さらに、遠隔地からスマートフォンなどとコントローラーで操作できるカメラ付き「リモートファーミングロボット」を活用し、収穫適期判断、収穫・粗選別、立茎管理のAIアシストの実証も行う。25年度まで実証試験を続け、技術の普及を図る。
担当記者:大谷