広大発農業ベンチャーの佐々木(東広島市八本松町正力44-85、江口康人社長)は10月、自社農地に設置した発電パネル下で作物を育てる営農型太陽光発電でキノコの一種「マスタケ」=写真=の栽培に成功した。山間部ではない平場での生産は全国初という。ビーガンなど素食者向け食材として1㌔3〜5万円での取引を見込み、今後は専門業者と連携して原木の量産方法を確立。インバウンド向けメニューの考案を進める高級ホテルや料亭など飲食店に提案する。マスタケはサーモンの身に近いピンク色で、鶏ささみ肉のような食感がある。同社は22年に肉代替製品開発の一環でキノコ類の調査を開始し、23年10月頃に栽培温度や繁殖力が平場に適したマスタケの優良菌を発見。通常は山間部の自然に近い環境で育てるが、同社はプラスチック容器内に原木を入れ、耕作放棄地などに設置する発電パネル下での栽培方法を開発した。既に西日本に点在する関連農家3件と自社農場の計4カ所で栽培始めており、2027年末までに総生産量900㌔、売上高合計3600万円を目指す。キノコ種菌販売トップシェアの森産業(群馬)を通じて種苗法の品種登録を行い、海外販路も模索する。マスタケは国内の森林でも腐った木などに自然繁殖する腐朽菌の一つ。英語で〝森の鶏肉〟と呼ばれ、北米や欧州の一部で食べられている。1970年代頃まで国内でも栽培され流通していたが、シイタケのように安価なキノコの普及などを受け生産量が減少。現在育てる農家は僅少という。江口社長は「希少性が高いマスタケをマツタケに次ぐ高単価キノコとして訴求する。訪日客の増加もあり肉を使わない料理の国内需要は拡大傾向。農業に必要な電力を太陽光発電で賄うエシカルな生産でもあり商機は十分にある」と語る。同社は2020年設立。営農型太陽光発電のキクラゲ栽培や農業コンサルを手掛ける。食品業者と提携し、収穫物を植物由来の代替卵に加工して販売。東京の高級ホテルなどに出荷している。

担当記者:額田

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