マツダ(毛籠勝弘社長)は「ブループリント」と銘打つ組織風土改革をこれまでの間接従業員に加え、本年度下期から生産現場などの直接従業員向けに順次実施する。従来のピラミッド型(組織の上位から現場に向かって広がる)意思決定プロセスを覆し、現場の社員が主役となる企業風土を醸成する取り組みで、昨年10月から1万2000人超の間接従業員がプログラムを受講。カーボンニュートラルなどで時代が大きく変わる中、人的資本経営で組織の隅々まで挑戦や共創を促していく。
自動車業界は100年に一度の変革期にあるとされ、コネクティッド・自動化・シェア・電動化の頭文字を取った「CASE」と呼ばれる技術革新などが求められている。とりわけ電気自動車分野では米国のテスラや中国のBYDといった新興メーカーが台頭したほか、ソニーなど異業種から参入を表明した例もある。こうした状況下でより競争力を高めるため、マツダは「人」が最も重要なリソースと定義。2022年11月公表の経営方針では、30年までの生産性倍増を目標に掲げている。ブループリントは、特にものづくりや顧客対応の現場で働く社員が能力を発揮できる環境づくりを目指す。間接従業員向けの2日間のセッションでは、部門や年代の異なる約20人が一つのグループで交流。社員同士のコミュニケーションが活発な意見交換を生み、成長意欲を喚起することを体感してもらったという。今後は26年3月期までに直接従業員を含む全社員に展開。顧客への提供価値の向上につなげていく。このほか、AIやITを活用して業務効率化を図るDX推進活動も全社で進めている。人への投資として、採用のための設備や制度も整える。来夏に東京都港区の麻布台ヒルズでR&D(研究開発)オフィスを開くほか、今年2月には同区の六本木ヒルズ森タワーに採用活動などの拠点を開設。技術者などの獲得競争が激化する中、首都圏の大学や研究機関、求職者との関係を築く。工場の働き手の確保に向けては、南区にある五つの社員寮を統合して27年春に新寮を設ける。また、退職した元社員の再雇用制度「アルムナイ採用」を本格導入する方針も打ち出している。
担当記者:近藤