少子化や人手不足を受けて「新卒の売り手市場」傾向が強まる中、若年層から選ばれるために備後地域の衣料メーカーは本社の建て替えを進めている。オフィス設計のアーバンプラン(東京)の2023年の意識調査によると、就活生の9割以上が「オフィス環境の魅力度と志望度は比例する」と答えた。JR福山駅近くの好立地に移転したり、働きやすい環境を整えるなど、各社は優秀な人材の確保や定着率向上に力を注ぐ。
作業服のバートル(府中市鵜飼町)は福山駅近くの霞町に本社機能を移す。7階建ての建屋(延べ2839平方㍍)を25年8月に完成予定。経営や企画、新商品開発などの部署が入る。広域から通勤しやすい環境にし、人材獲得につなげる。デザイン性の高いファン付き作業服などが支持され、23年11月期売上高は前年比23・9%増の218億円を計上した。事業拡大に伴って現本社は手狭となっており、現在の約90人体制から順次増員する方針を掲げる。同駅近くでは他に、カジュアル衣料OEM大手のマツオカコーポレーション(福山市宝町)が西町に本社=完成予想図=を新築移転する。5階建て延べ3100平方㍍を25年3月に竣工予定。総投資額は14億円。最新のIT環境を整えて生産性向上や海外拠点との連携強化を図る。同社は「現社屋は築35年と老朽化が進む。美しく働きやすい環境で社員のエンゲージメント(絆・愛着)を高めたい」とする。現本社屋の活用方法は未定。作業服のコーコス信岡(同市新市町)は本社工場を現地で建て替える。旧建屋は解体済みで、3階建ての新工場は来夏に稼働予定。現本社工場は裁断や縫製などの一部加工を担っており、仕上げのプレスに使うボイラーの導入などでボタン付けを含む全行程の内製化体制を整える。職人の高齢化が進んでおり、技術者の採用や育成に取り組む。
担当記者:道本