制御盤設計・製作などの東洋電装(安佐南区緑井4-22-25、桑原弘明社長)は、中小製造業向けのDX支援を本格化させている。2022〜23年度に経済産業省事業に採択され、自社とジーンズ製造の総社カイタックファクトリー(岡山県)、筆製造の晃祐堂(安芸郡熊野町)、ビーズ製造のトーホー(西区)で、生産管理システム導入・刷新、動画による動作解析、画像検査による工程の自動化、デジタルタグによる在庫管理などの実証試験を行い、生産効率化を図っている。自社で「消耗品発注システム」などのアプリを開発し、中小製造業のDX導入のきっかけにする。
総社カイタックファクトリーでは高級ブランド「YANUK」に低価格帯の「オカヤマ デニム」が加わって2オペレーションになり、生産量が増加。東洋電装の生産管理システムを導入し、生産計画変更後のスケジュールを複数提示できるようにカスタマイズして、稼働標準タイムの蓄積で計画精度が向上した。ジーンズの洗い加工工程の効率化が課題になっていたが、設備稼働監視システムで2台の洗い窯の稼働状況、担当人数、時間、作業回数などを分析し、稼働率を平準化させた。検品仕上げ工程では、手作業に代わり、台上にジーンズを置きカメラでサイズを検査する「自動採寸システム」を導入し、自動化に成功した。晃祐堂は化粧筆生産のプロセスや事業ポートフォリオの聞き取り調査、現場視察を行った上で、DXビジョン・ロードマップ作成の前段作業として①競争優位戦略の明確化②ビジネスプロセスの言語化③ビジネスプロセスマクロモデルを提案・推進している。さらに作業伝票とICカードを同期させて、注文に対する生産進捗状況を見える化するシステムを第一ステップとして導入。見込み生産後の製品在庫管理ではRFIDタグを使ったシステムで在庫状況をデータ化し、見込み生産量の予測や生産計画の自動化を進める。他にも筆の毛先をそろえ逆毛やすれ毛を取り除く工程にカメラを設置。工程の見える化と作業のスピードアップや毛をそろえる基準づくりなどにも取り組んでいる。トーホーは晃祐堂と同様に、グラスビーズ生産の聞き取り・視察調査を行い、DXビジョン・ロードマップ作成の前段作業として①〜③の提案を行い推進中。生産管理システムとしては、主要製造プロセスである「原管プロセス」について、現在黒板で行っている生産計画をデジタル化。ネットワーク環境であればどこでも誰でも確認・共有できるようにした。また、一次加工プロセスに含まれる「原玉プロセス」も作業伝票とICカードを同期させ生産進捗状況をデジタル化・見える化するシステムを導入。ガラス玉を伸ばしビーズを作る際の温湿度、引っ張り強度などをデジタル管理することで生産の最適化に向けた提案を進めている。東洋電装はネジや電線、トイレットペーパーなどの消耗品を引き出しに貼ってあるQRコードをスマホで読み取り、発注担当者に送信するアプリを開発。中小製造業のDX支援のきっかけとして、戸締りや消灯などを確認できる「退出・防犯チェックアプリ」、会社駐車場の情報共有ができるアプリなどの開発も進めており、24年度に20アプリを開発し社内などで実証試験し、営業先に有料での導入を促す方針。CO2排出量の見える化などGⅩ(グリーントランスフォーメーション)支援も始めた。桑原社長は「少子化や人手不足で製造業のDX化のニーズは今後も増え、市場規模は大きい。30〜300人の中小製造業を対象に、10億円の事業を目指す」と話している。
担当記者:大谷