広島信用金庫(川上武理事長)は後継者不在の地元企業に対し、事業承継型M&Aでの事業引き継ぎサポートに注力している。2023年度は制御盤設計・製作などの中国電装機材(安佐北区上深川)が電気通信設計・施工の大成ナグバス(安佐北区落合)に、自動車販売の木本モータース(佐伯区湯来町)がガソリンスタンド運営などのTAISEI(南区段原日出)に、土木設計・測量のみずほ設計事務所(西区中広町)が土木工事業の福永建設工業(西区観音新町)に事業承継し、広島信金がサポートした。庫内の公募チャレンジ制度で、支店担当者と本部お客様サポート部が共同で案件に対応するなど、人材育成も強化している。
中国電装機材は國澤綾美氏が先代の後を継ぎ社長に就任し事業を運営してきたが、後継者不在であったことから、事業運営の引き継ぎについて検討を開始。広島県事業承継・引継ぎ支援センターにも相談し情報を収集。従業員や取引先を守るため信頼できる経営者に事業を任せたい意向があった。広島信金では國澤氏にヒアリングを重ね、過去にM&Aの実績があり事業領域拡大が見込まれる大成ナグバスを紹介。同社への引き継ぎでも複数回の面談を重ね、経営陣同士の相性、経営スタンスなど十分なすり合わせを行い、23年4月に成約した。國澤前社長は顧問に就任し、現在では両社間の人材交流も活発に行われている。木本モータースは後継者不在の事業引き継ぎに際しては、自動車販売などの事業を生かしシナジーが見込まれることを重視。広島信金では過去にM&Aの実績があり、カーリースや車検などの業務を拡充していることから同社との事業シナジーが見込まれるTAISEIが木本社長の意向にも合致すると考え、同社への事業引き継ぎを提案。23年10月に成約した。みずほ設計事務所も後継者不在であったことから、広島信金に相談した。同社は1級土木施工管理技士などの有資格者5人が在籍し、土木設計や測量がメイン業務。従業員の雇用と事業の継続を重視していた。広島信金は、同社と業務上の縁があり、M&Aによる業務領域拡大に取り組んでいる福永建設工業への引き継ぎを提案。23年7月に成約した。広島信金では、事業の引き継ぎを検討している事業者の意向をヒアリングし、意向に沿った引き継ぎ先を提案することを第一に、03年の取り組み開始以降で譲渡・譲受企業を合わせ141社の引き継ぎをサポートしている。
担当記者:大谷