アニメ風のキャラクターに声を当てて動画を配信する「Vチューバー」を、事業に取り入れる県内企業が増えている。同分野は首都圏の事業者を中心に市場規模が急拡大。商機を見いだし、関連の音楽イベントの開催や所属事務所の開設、キャラクターづくりなど、事業化のすそ野が広がりつつある。

写真加工などのアスカネット(安佐南区祇園)は8月、市内3カ所のライブハウスでイベントを開く。インターネットを介して全国20数人が歌やダンスを披露し、グッズを販売。出演者が県内の名所や飲食店を紹介する企画もある。同様の催しは県内初という。同社は昨年にキャラクターを使ってライブ配信する「Vライバー」事務所の運営企業を子会社化するなど、現実と仮想世界を融合させるXR(クロスリアリティー)分野に注力。首都圏で盛んなVチューバーや関連イベントの認知を高め、広島からなり手や関連事業者を増やす狙いがある。タレント事務所のオタグループ(南区京橋町)は年内に、県在住者に特化した事務所を立ち上げる。下西竜二社長は「顔を出す必要がなく、さまざまな人が活躍できる。三原市に住む祖母(86)は『婆ちゃるアイドル メタばあちゃん』=写真①=として活動。昨秋に全国からメンバーを募り、メタバース(仮想空間)でイベントを開いた。生き生きと元気になっており、高齢者や引きこもりの人向けのケアプログラムで事業化を検討中だ」と話す。会社説明動画などに使うキャラクター制作の需要も増す中、デザイン制作などクリエーティブに特化した就労継続支援B型事業所を運営するオリエンタルブルーム(中区大手町)はイラストに立体的な動きを付けるソフトウエアの使い方を利用者に教え始めた。体制を整え、今後の受注を目指す。

写真②「にじさんじ」キャラクターをラベルにしたワイン

せらワイナリー(世羅町)は企画会社から依頼を受け、人気VTuberグループ「にじさんじ」のキャラクターをラベルにあしらったワイン=写真②=を受託製造。赤・白・ロゼとグラスのセット(9900円)は2月の発売から2週間で3000個が完売した。同グループが配信した製造工程などの紹介動画は26万回以上再生された。金廣隆徳社長は「小ロットからオリジナルラベルのワインを製造できることをホームページで発信していたら、声がかかった。ファンが当社に足を運ぶ『聖地巡礼』もあり、施設や商品を知ってもらう機会になった」と喜ぶ。矢野経済研究所によると、コロナによって自宅で過ごす時間が増えたのに伴いVチューバーの知名度と人気が急拡大した。ここ2年で所属事務所の運営企業2社が上場。2022年度の国内市場規模はグッズや楽曲の販売、広告料、有料イベントなどで前年比67%増の520億円となり、23年度は800億円を予想する。県内でもますます活用が進みそうだ。

担当記者:大島

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