ジェイ・エム・エス(中区、桂龍司社長)は、がんの薬剤を外に漏れださない仕組みで混合・投与するデバイスが、宇宙空間で細胞培養液を交換するシステムに応用されることが決まった。3月に宇宙航空研究開発機構(JAXA)の一般競争入札で、「定型化細胞培養装置クイックコネクトディスコネクト(QCD)のグランド・モデルとフライト・モデルの製作」を落札。2026年1月以降の打ち上げ・宇宙実験を目指す同培養装置の技術実証に使用される見通しだ。JAXA向けは初。

抗がん薬を安全に調製するために開発した主力製品の閉鎖式薬剤移注システム「ネオシールド」は、容器内外の差圧を調整することで外部の空気と接触しない仕組みで、微生物などの混入や、薬剤の飛散・漏出を防ぐ。操作の安全性が高く簡易化。この設計が、細胞培養装置のQCD(素早く安全に装置を接続、切断する仕組み)の製品仕様に役立つと判断され、昨秋、エンジニアリング・モデル(基本設計に基づき、次の詳細設計段階に移行するためのデータ取得が目的)用に落札している。宇宙ステーションの限られた実験スペースに対応するため小型化を図り、JAXAの仕様に合わせてエンジニアリング・モデルを製作し、詳細設計に移行するためのデータ収集などを行ってきた。試験や訓練の内容に応じて機能改修するグランド・モデル、実際に宇宙に打ち上げ、評価するフライト・モデルを今回落札し、契約を締結した。完成すれば、多くの研究者に利用されることが期待され、宇宙空間での細胞培養液の交換に応用できると判断。JAXAは、定型化細胞培養装置の技術実証のための再生医療分野に関する研究2件を選定。この研究に同社の製作した QCDが使用される。

担当記者:藤井

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