どんなきっかけがあったのか、ふりかけを擬人化。SNSなどを通じて口コミで伝わる〝バズマーケティング〟手法が当たり、三島食品(中区南吉島)が好調だ。定番「ゆかり」などをシリーズ展開したネーミングと、精魂を傾ける商品力が相まって売り上げを伸ばし、2023年12月期で過去最高の売上高139億9900万円を計上。21年2月に発売した「ひろし」は、原料に使う広島菜が息を吹き返すという、興味深いエピソードも生んだ。広島菜は県伝統野菜で日本三大菜漬けの一つとして、その名をはせた。太田川沿いの河川敷が成育環境に適し、鮮やかな緑は戦後復興の象徴とも言われたが、漬物需要の低迷とともに生産量が下降。だが救世主が現れた。ひろしは、JA広島市広島菜漬センター(安佐南区川内)で5㍉カットした広島菜漬けでつくる。ひろし発売前の20年度の広島菜の業務用生産量は780㌧にとどまっていたが、翌年度は倍近くの1350㌧に跳ね上がり、以降1200〜1300㌧で推移。JAの藤本センター長は、「広島菜発祥の地、川内地区の作付面積は1997年の33㌶から現在は三分の一に縮小。商業施設も増え、宅地化が進み、生産者の高齢化、後継者不足が続く。しかし広島菜を使ったヒット商品で白木や沼田、湯来地区からの出荷を合わせても足りず、今は千代田や庄原地区から応援してもらっている。ひろしの活躍は何より生産者の励みになっている」6〜7年前から擬人化作戦を始めた。定番「ゆかり」、「かおり」、「あかり」3姉妹の弟分として、ひろしの名が思いがけず話題に。特段仕掛けたわけではなく、ゆかりやひろしの関係など自由にストーリーを膨らませて、あれこれと取り沙汰されたという。20年「うめこ」、22年「かつお」、23年「鮭ひろし」、今年1月にはわさびの利いた新人の「しげき」が加わった。自社商品で競うカニバリの影響もあり24年度計画は前年度より少なめだが、生産量は毎月、記録を更新。広報の佐伯俊彦さんは、「しげきが想定以上に売れ、供給が間に合わないため出荷調整している。原料不足も懸念され、急きょ産地へ増産を依頼。納入先の小売店ではシリーズ商品をできるだけそろえて同時販売してもらうことで、買い上げ点数が増え売り上げ増につなげている」ふりかけを調味料として展開する「メイン食材販売支援プログラム」も浸透し始め、生鮮三品の販売を促進。量販店や小売店の売り上げ増を後押しし、連れてふりかけの生産量は上昇カーブを描く。伝統+開発力+ネーミング+SNSを見事にブレンドしたチームワークが快進撃の秘訣なのだろう。

担当記者:藤井

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