県内で営業するフィットネス各社がエステマシンの設置で美容に関心がある客層の開拓を進めるほか、元カープ選手による指導やAI活用のトレーニングメニューなどで付加価値を出し、差別化を図っている。ライフスタイルの多様化などを背景に、従来の総合型よりも店舗面積が小さく出店しやすい24時間型が広がる。格闘技など特定のエクササイズに特化したブティック型も増加傾向にある。
アミューズメント施設運営のプローバグループ(安佐南区)は2019年から展開するフィットネスジム「Vace1」でコラーゲンマシン(参照:写真)を置くエステ併設店を展開。同社は「健康や体作りと同時に美しくありたいと考える40〜50代女性に特に好評。今後、電気刺激で表情筋を鍛える県内初導入のテラボーラーほか、マシンピラティスも計画している」と話す。パーソナルトレーニングジムのライザップ(東京)は「コンビニジム」と銘打つ24時間無人運営ジム「チョコザップ」の出店を加速。2月21日開業の南竹屋店を含め、県内64店を直営する。セルフのエステ機器を充実させ、昨年9月末から歯のホワイトニング、ネイルなども加えている。ワークスペースやドリンクバー、マッサージチェアも設け、テレワークや外回り中の休憩にも使ってもらう。同社は「日本のフィットネス人口は3%台と先進国の中でも低く、美容やリフレッシュをフックに運動をより身近なものにしたい」とする。

トレーニング内容で差別化を図る例もある。24時間営業個室ジムのハコジム(南区)は自社開発のスマートミラー(参照:写真)でバーチャルのパーソナルトレーニングを提供。スマホで質問に答えるとAIが最適な運動メニューを組み立て、鏡の中に映し出されるトレーナーが指導する。30店中20数カ所に導入済みで、メニューを順次充実させている。プローバグループは昨年8月、豪州発のボクシングスタイルのフィットネスジム「ユーボックス」を都内3カ所に同時出店。世界90店以上を展開する英国企業と国内独占契約を結び、10 年でFC含め145店超を計画する。元カープ選手の今村猛氏が社長を務めるKPB(中区)は1月、自ら指導するパーソナルトレーニングジム「R-GYM」を中区舟入町に開業。選手時代に培った体調維持管理手法について食事や睡眠、生活習慣を交えて指導する。今後トレーナーを増員し、スポーツ選手のセカンドキャリアの受け皿を目指す。フィットネス需要はコロナによる落ち込みから回復傾向にある。経産省によると、23年の業界売上高は前年比5.1%増の2819億円だった。店舗数は10年前の1043から1497に拡大。FC加盟などで異業種からの参入が押し上げている。保育園運営などのアイグランホールディングス(西区)はエニタイムフィットネスのFC加盟店を全国に約30店展開するほか、飲食業のフクダ・グローバル(東区)は昨年6月に「ライフフィット」をJR広島駅近くに開店。月額2980円と割安で、1回500円の都度利用もできる特徴を打ち出す。競争が激しくなる中、特色あるサービスの提供が顧客をつかむ鍵となりそうだ。