2024年の広島県経済は緩やかな回復基調になったが、物価高や原材料高が続き、企業業績や家計への影響が懸念される。広島では新サッカースタジアムが開業。今春にはJR広島駅ビルが開業するなど都市開発が進む。地元金融機関トップに25年の県経済の見通しや注力分野などを聞いた。

―取引先の現状と25年の見通しは。自動車関連は生産台数減少の影響が出ており、内航船の造船業は受注を3年分持つ企業もあります。戸建て住宅販売は資材の値上がりもあり、販売が減少し建築規模も縮小傾向で、木材業にも影響が出ています。スーパーは価格転嫁が浸透し、売上高が増加。ホテル・旅館はインバウンド需要が旺盛で今後も活況が期待されます。25年も緩やかな回復が続く見通しですが、物価上昇やトランプ大統領の就任の影響、ウクライナや中東情勢などの下振れリスクは多い。長引く物価高は節約志向を高め消費抑制につながる可能性があります。春闘では物価上昇を上回る賃上げを期待したい。金利上昇は中小零細企業には痛いと思います。企業の運転資金は収益力があるかどうかがポイントで、低金利でシミュレーションしているところも多く、特に家賃を上げにくい賃収ビル経営などに影響が出るのではないでしょうか。―全国の信用組合の動向は。23年11月に新潟県の3信組が合併し「はばたき信組」が発足以降、現在合併の予定はありません。地方銀行では1月1日に青森銀行とみちのく銀行が合併。人口や企業数が減少しており、各業態で合併などの再編は今後も続くと思われます。―市信用の注力分野は。25年のキャッチフレーズは「継続は自信を育む」で、フットワークとフェイス・トゥ・フェイス重視で融資に特化する経営方針は変わりません。25年3月期決算で22期連続の増収、経常収益、経常利益が過去最高、純利益は初の50億円台を見込んでいます。内部留保は3月末で500億円達成の計画です。預金残高は4年後の29年3月期、貸出金は7年後の32年3月期の1兆円到達を目指しています。―ゼロゼロ融資の返済状況は。24年9月末時点で全体の90%以上の顧客が元金返済を行っている一方、破綻して代位弁済を受けた先や原材料費の高騰などで資金繰りに苦慮する先もあり、厳しい状況は続いています。ゼロゼロ融資総額に占る代位弁済の割合は5・2%です。―支店の新築移転などの設備投資は。9月に南支店、12月に鷹の橋支店を新築移転開店予定です。古江支店も26年度の新築移転を予定。その後に備後を中心にした新設店舗や、向洋、大河、戸坂、江波、出島支店などの新築移転も検討しています。デジタル化はタブレットを使う電子会議、テレビ会議、営業支援システムなどを導入済みで、今後も随時導入を検討。4月入組職員の初任給を25万5000円に上げ、信組業界、県内金融機関でも最高水準です。今春は47人が内定、来春は40人を採用する計画です。

担当記者:大谷

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