2024年の広島県経済は緩やかな回復基調になったが、物価高や原材料高が続き、企業業績や家計への影響が懸念される。広島では新サッカースタジアムが開業。今春にはJR広島駅ビルが開業するなど都市開発が進む。地元金融機関トップに25年の県経済の見通しや注力分野などを聞いた。
―県経済の現状と新年の見通しは。全体的に緩やかな回復基調だとみていますが、建設や流通など幅広い業種で人手不足を背景にした人件費の増加、為替を含めた仕入れ価格の上昇を販売価格に反映できている企業とそうでない企業の格差が出ているように思います。25年は地域でも大手を中心に賃上げが予定されていると聞いており、山口FGでも対応を検討しています。米国のトランプ大統領が1月20日に就任。広島の経済では、北米での販売が好調なマツダへの影響が懸念されます。メキシコ工場からの供給に関税がかかると、地元の関連企業にも影響が出ます。金利については25年1月に17年ぶりの水準まで引き上げが実施されました。為替や物価の状況によっては、今後さらなる引き上げも考えられます。金利上昇は、取引先企業のみならず個人のお客さまも含め多様な影響をもたらすため、利上げの影響や今後の金利政策動向の注視が必要です。預金金利上昇が先行し、貸出金利に関してもお客さまに丁寧に説明し、金利上昇も見据えた総合的な資金計画・投資計画を支援させていただけるよう、対話を進めています。―もみじ銀行の25年の注力分野は。4月から新中期経営計画が始まります。デジタル化や人材確保などに課題を抱えるお客さまを支援し、地域経済の成長に貢献するには、戦略的投資による、課題解決に役立つケイパビリティ(企業全体の組織的能力)の強化が不可欠です。グループ会社と連携し、金融の枠を超えたサービスを提供したい。当社もお客さまと同じ船に乗り、共に成長することを目指します。財務面ではROE(自己資本利益率)をどう高めるかを重視しています。銀行としては、頭取に就任した24年4月から顧客との接点強化を行ってきました。今後はお聞きした課題に対する提案や対応のブラッシュアップをしたい。例えば人手不足という課題が顕在化している企業に対し、問題の背景にある課題について表層化していない部分まで掘り下げ、業務改善提案による人手不足そのものの緩和に取り組んだり、グループの総合力を生かした本質的な解決策を提示したりといったことを考えています。踏み込んだ支援や対話ができる関係の構築を目指します。―24年の取り組みをどうみますか。人的資本経営に取り組み、特に女性活躍推進に注力してきました。グループ全体の女性管理職比率は24年11月末時点で7・1%で、21年3月末から5・9ポイント上昇しました。31年には15%以上にする目標です。3月には中区に女性職員寮(全50戸)を建設し、うち10戸には当社以外の地元企業の女性社員も入寮できるようにしました。集会室を設けて「働く女性の健康管理」などの講演イベントを開き、交流を深めています。また12月から、住宅ローン業務でクラウド型銀行業務統合プラットフォームの運用を開始しました。申し込みから契約まで、今まで紙書類や電話が介在していた業務プロセスをウェブで完結し、住宅業者からも好評でした。支店の事務作業も大幅に減り、これまで以上に相談業務に時間を充てられます。今後は個人向け無担保ローンや法人融資での導入を見込みます。―他の新年のトピックスは。24年のカープⅤ預金は前年比26億円増の2599億円でした。今年はⅤ預金30周年になります。これからもカープへの応援を通じて、地域を盛り上げていきたいと思っています。
担当記者:大谷