VR(仮想現実)、AR(拡張現実)などXR(クロスリアリティ)の産業利用が注目されている。医療、観光、企業紹介など幅広い分野に事業展開し、NTT子会社のNTTコノキューやMetaなどと業務提携も進めるビーライズ(南区松原町)の波多間俊之社長に、提携の進ちょく状況や自社の事業展開などについて聞いた。

―NTTコノキューやMetaとの提携はどのように進んでいますか。XRを活用したビジネスが拡大する中、コノキューの大規模なネットワークインフラと最先端技術を活用したメタバースプラットフォーム、XRデバイスと、当社の企画・コンサルティング力や3DCG技術など両社の強みを生かしたい。定期会合を行っており、コノキューが提供するブラウザ版仮想空間プラットフォーム「DOOR」と、アバター経由でAI応対も有人応対もできる接客システム「NTTXRコンシェルジュ」で、企業や自治体のニーズに合わせカスタマイズしてサービスを提供します。XRコンシェルジュは、企業の入口受付やショッピングセンターなどのデジタルサイネージでの利用を見込んでいます。Metaが昨年に法人向けサービスを始め、声掛けされてプレミアムパートナーになりました。VRヘッドセット・スマートグラスなどのハードウエアとサービスプラットフォーム、イベントでのサービス周知、Metaへのソフトウエア提供で協業していきます。―ビーライズの最近のXRコンテンツの実績は。企業研修分野では、製造・インフラ関連のコンソーシアムで、今年度からVR安全教育を試行し、来年度から本稼働の予定です。トヨタL&Fや建機レンタルのアクティオ向けには、建機の運転の安全教育VRを開発。マツダE&Tでは車両生産時の注意点を学ぶプロダクトプロモーションを制作しました。ロイヤルドライビングスクールではVRドライブシミュレータ、LITALICOワークスの監修で就労移行支援施設向けにVRでピッキング業務を学ぶアプリを開発しました。医療分野は競合が少なく、これから伸びる分野だと思います。2023年度に広島県の「健康・医療関連産業創出支援事業費補助金」に採択され、AIとバーチャルヒューマンによる問診トレーニングアプリを開発。23〜24年度の広島県「サンドボックス・サキガケプロジェクト」では広島大学と連携し、症例共有用データベースに基づくスマホ用の診察シミュレーションアプリを開発。医学生向け教材として3大学に導入し、他にも複数の引き合いがあります。―観光やエンタメなど他分野は。昨年度、エネコムなどと山口県の「やまぐちメタワールド」を共同受注しました。小中学生向けに地元企業の魅力をゲーム感覚で伝える内容で、今年度は高校・大学生向けに観光スポットなどを盛り込んだ続編を制作。鳥取県からは「バーチャルとっとり」をトッパンなどと共同受注。バーチャル空間で若者同士の交流による移住定住促進、就職相談、鳥取県の暮らしや観光情報を発信しています。広島テレビと始めた「メタカープ」はメタバース空間内で試合観戦、チャットコミュニケーション、アバターによる応援などができます。大瀬良投手のノーヒットノーランの試合は約3000人が観戦しました。高速道路や住宅・店舗の3DCG化も行っています。道路や周辺地形を可視化してさまざまな角度から閲覧できるようにし、建築物の内外観の3DCGパースは家具の配置替えもできるようにしています。地元の街づくり法人「カミハチキテル」は相生通りの一般車乗り入れを制限し公共交通だけが通行でき公園のような空間にする「トランジットパーク構想」を掲げていますが、その未来図をVRで制作し9月に披露しました。―中期的な事業計画は。昨春に本社をJR広島駅隣のJPビルディングに移転。従業員も32人に増え、デザイン部、XR開発部の制作部門に加え、企画部のXRコンサルティングチームを増強しています。秋葉原の東京支社は大企業向けの受注やVR機材のサポート拠点でエンジニアも含め8人が駐在。現在売上高は3億5000万円規模ですが、5年後には従業員100人、年商10億円を目指したい。

担当記者:大谷

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