2015年10月に地場流通大手イズミと資本・業務提携し、来年で10年目を迎える。商品仕入や物流、システム、カードなどイズミのインフラとスケールメリットで、店舗の運営力を引き上げている。6月1日付で会長から現職に戻り、さらに10年後を見据える。事業環境が激変する中、出店戦略や店舗運営などを中心に経営方針を聞いた。
-近年、スーパー業界で再編統合が加速している。競争激化に打ち勝つ経営戦略をどう描いていますか。当社が店舗展開する地域でも他エリアからの新規参入が目立つほか、CVSやドラッグストアなど業態の垣根を超えた競争も一段と激化している。さらに仕入れコストをはじめ人件費や水道光熱費、建設費などが軒並み高騰しており、事業環境が大きく一変した。こうした事態を受け、提携20年となる2035年に向けた長期的な方向性を明確にしながら、喫緊では新たな運営モデルの策定に入った。引き続きイズミグループとしてインフラを活用しながら、イズミの新フォーマットのプロジェクトにも参画し改革を推進する。一方で、食品スーパー「ユアーズ」と高品質スーパー「アバンセ」の2業態を軸に売上規模の拡大を継続し、競争力を高めながら効率運営する両輪駆動で筋肉質の経営を推し進める。まずは2月中旬に発生したイズミのシステム障害を受け、早急にオペレーション回復に取り組み、再発を防止するとともに、ご迷惑をおかけした対応を急ぎ、今後は危機管理に万全を期したい。-ユアーズとアバンセの今後の店舗展開を教えてください。共に新規出店を強化していく。現在県内24、岡山1の計25店舗。出店戦略は、都市型住宅立地を中心に中小型店を集中出店し、地域密着で高質なスーパーを目指している。ユアーズは5月に改装した府中店のほか昨年12月、近隣の新規分譲マンション計画に併せて一体開発し移転オープンした東本浦店をモデル店としており、競争力と効率運営を両立させる取り組みを強化している。新規出店と同様、既存店のリニューアルを強く進める。85%の店舗はリニューアル後の経過年数が9年以内であり、今後も店舗の若返り、最新パターンへの転換を進める。アバンセは18年9月に広島駅2階ekie、21年7月に紙屋町シャレオ、22年4月にゆめタウン廿日市店内に小型店を出店し、現在5店舗体制。従来とは異なる立地への出店で、通勤通学やショッピングセンター利用などの顧客層に対象が広がり、それに対応する品ぞろえや店舗オペレーションのノウハウが蓄積してきた。現在、戦略やコンセプトの見直しも実施しており、出店可能な立地が広がったため、新しいチャレンジを増やしていく。-イズミの出店戦略によるシナジー効果が期待されます。今後も、ユアーズ店舗は食品スーパー「ゆめマート」との連携レベルを上げていく。既にスーパーのグループ企業が6社あり、大変有意義な連携を行っている。さらに西友(東京)が福岡の都心部中心に全69店舗を配す食品スーパー事業をイズミがグループ化する。24時間営業で、地域密着、ローコスト運営を実現し、ノウハウも内製化されている。当社も吸収していきたい。-今後の事業展開について。イズミとの提携時に確認した「共に協業してメリットがあることは積極的に行い、ユアーズが得意とする分野、特徴はさらに伸ばしていく」という方針を、より高いレベルで実現するため、提携20年の2035年に向け再始動する。大きな環境変化は経営改革のチャンスと捉えており、収益体制の構築を図るとともに、社員のエンゲージメントを高め、やりがいを拡大し、イズミの処遇や福利厚生に近づけるよう取り組んでいく。
担当記者:藤井