2023年3月に父の平岡弘幸現会長の後を受け社長に就き、1年が過ぎた。自動車用・産業機械用金型に加え、部品加工が売り上げを伸ばし、新規事業のノベルティ、アウトドアグッズ製作販売にも積極的に取り組む。金型業界の動向や20年に設けた「精密部品加工・調達代行センター」の状況、新規事業の取り組みなどについて聞いた。

-社長就任後の手応えは。23年3月の社長就任から1年がたちました。父は工場のあるタイに常駐していたので、専務時代とそれほど変わらず、「ご縁を大切にできることをこつこつとやっていく」方針を継続。ただ、社内外から社長として見られ、発言の重みが出て仕事がしやすくなった半面、責任も感じています。-金型部門はどんな状況ですか。日本金型工業会の役員を務めています。全国の金型関連事業者はピーク時のバブル直後で全国に約1万4000社あり、現在は約5000社に減っています。供給過多気味で、今後3000社くらいになるのではないかという話もあります。自動車業界のEV(電気自動車)シフトに加え、コロナ禍で金型の海外現地調達が加速。日本で製作しアジアや欧米に輸出していた金型が現地製作に切り替わるケースが増えています。4月に日本金型工業会の横田悦二郎学術顧問(日本工業大学客員教授)を囲み、金型工業会のメンバー3社と長野で懇談しました。平岡工業もタイの工場で一部金型を製作していますが、中国やインドネシアに拠点を持つ企業もあり、外需による海外展開や新たな工作機械を使った技術革新などが話題に。将来工業会に戦略の提案ができればと思っています。-部品加工部門はどうですか。20年に「精密部品加工・調達代行センター」を設置。部品加工の売り上げは順調に伸びています。設計ができ、業務委託を含め調達のネットワークが豊富なところが強みで、大手菓子メーカーから商品の金属製モニュメントを受注するなど手応えを感じています。23年11月に東京都渋谷区恵比寿に東京事務所を開設し、私は1カ月のうち10〜15日間東京に駐在。部品加工やノベルティ製作の新規受注を目指して情報収集や人脈作りを行っています。東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏4都県の人口は約3700万人で、流入人口も多い。実際に従業員10人程度の企業で「レストア(復元)部品の需要があるものの、供給が追い付かないため月200万円くらいの受注に抑えている」という話を聞きました。広島との市場規模の差を感じています。確かな技術があり、人脈を作って、輸送の問題をクリアすれば、ビジネスは成功するのではないかと思っています。-新規事業の取り組みは。23年1月に本社敷地内にグッズ製造の新工場を完成し、同年4月に専用サイト「グッズクラブ」を開設しました。レーザー加工機やUVプリンターを導入し、人員は4人に増員。アイフォンケース、キーホルダー、アクリルスタンドなどを商品化しています。4月にカープ球団公認のキャンプ用品を発売。アウトドアグッズの「asobient」に加え、フェイスシールドなどを展開する「HIRAX」などの自社ブランド商品も拡充したい。工場開設1年で新規事業の収支はトントンになっており、口コミを含め今後の需要を増やしたいですね。

担当記者:大谷

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事