インテリア資材の大手商社サンゲツ(名古屋市)の完全子会社で、住宅用などの壁紙を製造する。東広島市高屋台の県営高屋東工業団地に国内最大規模となる壁紙工場の建設を進めている。井上弘一社長に広島進出の背景や工場の概要、今後の展望などを聞いた。

7月完成に向け建設が進む壁紙の工場

-工場を新設する背景は。住宅内装用の壁紙には大きく分けて、分譲マンションや賃貸物件向けの「汎用品」と、消臭や汚れ防止などさまざまな機能の付いた注文戸建て向けの「一般品」の2種類がある。国内の住宅着工数は伸び悩んでいるが、最近では一般品に限られていた機能が汎用品に付加されることで汎用品の需要が増大しており、業界全体で汎用品の供給余力が不足している状況だ。当社は国内シェアの約20%を占めるトップメーカーで、岩手県の一関工場で汎用品を、千葉県の成田工場で一般品を造っている。特に一関工場はフル稼働の状態が続く。受注は今後も堅調に推移する見込みで、親会社サンゲツの供給責任を果たすためにも、新たな生産体制の構築を迫られていた。当社がサンゲツの傘下に入る2021年以前から検討が始まっていた案件だ。-東広島市を選んだ理由は。既存の2工場は東日本にあり、BCP(事業継続計画)の観点で西日本への建設を計画。原料となる塩化ビニール樹脂などは瀬戸内地域の業者から調達しており、原材料の調達と、西日本への製品配送の距離を共に大幅に削減できるメリットがある。当初は岡山県も検討したが、水災害リスク、空港、高速道路への距離などを総合的に判断し、東広島市を選んだ。車で20分ほどの場所に比較的人口の多い西条があることも、人材確保の観点で大きな要素だった。-工場の概要を教えてください。敷地2万9000平方㍍に約1万4000平方㍍の平屋を建設中だ。昨年2月に着工し、今年の7月に完成を予定する。投資額は85億円に及ぶ。一関工場と同じ汎用品を造る工場にする。当初は2ラインで稼働させ、数年後には3ラインまで増やしたいと考えている。使う燃料は重油から液化天然ガスに転換し、温室効果ガスの排出量を削減。太陽光パネルも設置し、環境に配慮した工場になる。-採用を強化しています。来春の新卒者と中途入社を合わせ、来春までに30人以上の採用を計画している。フル稼働だと80〜90人規模を想定しており、継続した採用活動が欠かせない。進出が決まってから、執行役員と広島にいる社員が近隣市町や隣県の高校、大学などを訪ねて歩いている。まずは広島に腰を据えて製造することを知ってもらう活動だと思っている。壁紙は多くの人の身近な場所にあり、それを造るやりがいがある。これまでのシフト制による土日勤務は新工場の稼働を機に見直し、土日休みの完全週休2日制とする。働きやすい労務環境の整備に努めていく。-ご自身の経歴を。埼玉県出身で、横浜国立大学を卒業。アデランスを経て当社の前身となる日本ウェーブロックに入った。塩化ビニール加工などの技術畑を歩み、17年に社長に就いた。広島にこれまで縁はなかったが、妻が大のカープファン。プライベートを含めて広島との縁が強くなりそうだ。

会社概要

【本 社】東京都品川区東品川
【資本金】1億円
【売上高】115億1900万円(23年3月期決算)
【従業員数】210人

担当記者:梶原

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